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2022年6月28日 西村祐子

利島へ移住した若い世代が、島の人々の暮らしを支える~株式会社TOSHIMAで働く人が実感する「島で生きること」とは?<仕事編>

2015年、ココロココでは、伊豆諸島の1つである利島について、いくつかの記事でご紹介しました。

あれから7年、利島で働く移住者はさらに増え、島の若い世代は8割以上がIターン移住者になっているのだとか。株式会社TOSHIMAは、そんな流れの中で生まれた、島にやってくる船の離着岸業務を担う会社です。社長をはじめ、若手移住者も多く働く株式会社TOSHIMAでは、これからもっと社員を増やし、島の移住者雇用にも貢献したいと考えています。今回は、代表取締役である清水雄太さん(埼玉県出身、2010年移住)、社員の海老沢一真さん(静岡県出身、2017年移住)、本田晴菜さん(福島県出身、2021年移住)の3名にお話を伺いました。

<仕事編>では、島での生活を支える仕事内容ややりがい、新たな仲間を求める求人募集についてご紹介します。

株式会社TOSHIMAで働く人が実感する「島で生きること」とは?<暮らし編>
島の暮らしを支え、未来を一緒につくる人材募集!株式会社TOSHIMA(東京都利島村)

定期船が人々の暮らしを支える、人口300人の島

利島は東京から南に約140km、周囲約8km 、4.12平方kmという、伊豆諸島の有人島のなかで最も面積が小さい島です。島の真ん中に円錐形をした標高508mの宮塚山がそびえ、海岸線は断崖絶壁に囲まれています。島の産業は漁業と椿油の生産。島の約80%がヤブツバキの林に覆われ、冬になると島中で咲き誇る椿の花を見ることができます。

ピラミッドのような形の利島は海上からも目立つ存在

集落は島の北側にひとつだけ。港から坂道を上った先、斜面を切り開いた中に、村役場や学校、農協などの商店、民宿などが集まっており、約300人が暮らしています。

丸い形をした島には波除けになる入り江がなく、定期船が着岸する桟橋は外洋へ突き出ています。そのため、船の発着が天候や海上の状況に大きく左右され、海が荒れやすい冬場は定期船が欠航になる割合も高くなります。

船が欠航になれば、島外との行き来ができないだけでなく、貨物船が着かなければ物流も止まり、荷物の受け取りもできませんし、島内の商店にも品物が追加されません。定期船による人流・物流が、島の暮らしを支えています。

若手移住者も多く働く株式会社TOSHIMA

そんな島の暮らしを支える定期船の業務を担うのが、今回取材した株式会社TOSHIMA(以下TOSHIMAと表記)です。

利島の人口は約300人と少ないものの、この20年ほどの間、ほぼ増減していません。観光地ではないため知名度は高くありませんが、ここ10年ほどで移住者が増加。2〜40代の約80%が移住者で構成される島となりました。

TOSHIMAも、代表取締役の清水さんをはじめ、若手移住者が中心となって運営されている会社です。主に島の玄関口である利島港の定期航路離着岸事業などの港湾業務を請け負う会社として、2015年4月に設立されました。

現在、TOSHIMA代表取締役として活躍する清水雄太さんは、2010年2月に利島へ移住してきました。埼玉出身で、東京農大北海道オホーツクキャンパスを卒業後、東京都内の食品メーカーに勤務していました。

利島を知ったのは、大好きな「釣り」がきっかけでした。ある時ネットで伊豆諸島の釣り情報を探していたところ、偶然、利島農協の求人を発見。試しに履歴書を送ってみたところ採用となり、あっという間に移住が決まってしまったのだとか。

クレーン業務をこなす清水さん

農協で5年間勤務した後、2015年にTOSHIMAを立ち上げるメンバーとして村内で転職、現在の業務を担うことになりました。

会社設立から8年目を迎えた現在、清水さんは勤務する10名の従業員とともに、利島に暮らす人たちの生活に欠かすことのできない役割を担っているという大きな責任を感じながら、日々の業務を遂行しています。

緊張感も漂う、港内の離着岸業務

取材チームが利島を訪れたのは、4月下旬の午前11時過ぎ。東京から伊豆大島を経由して運行するジェット船での到着でした。風が強く海の荒れやすい日には、船が欠航になることも多い利島。この日も、港内の状況によっては着岸できない可能性もありましたが、なんとか無事に到着しました。

「ようこそ利島へ」シンプルな言葉がうれしい

現場業務を統括するチームリーダーの海老沢一真さんに出迎えられ、ホッとひと息。この船の就航の可否判断や実際の離着岸作業を行うのがTOSHIMAの主な業務です。

午後2時頃、次にやってくる船の業務があるとのことで、さっそく見学させていただきました。この日は桟橋の両岸を利用して、ほぼ同時に船が着岸するスケジュール。伊豆半島の下田からやってくるフェリーあぜりあが入港後、すぐにジェット船が到着しました。

着岸する船から係留用ロープを受け取る

着岸時には、到着する船の両端からロープを受け取り、港に係留させる必要があります。船が停止した後は、乗降客用のタラップを用意し、お客さんの誘導や荷物の積み降ろしを行います。

桟橋と船をつなぐ乗降用タラップを準備

大きな浮きのようなフェンダーを引き上げ離岸作業は完了

これらの作業をわずか20分ほどで完了させるTOSHIMAのみなさん。まるで舞台の場面転換を見ているかのような素早い動きとチームワークに驚きました。

「たまたま2隻の到着がほぼ同時だったので、今日はちょっと大変でしたね」と笑顔で答える海老沢さん。船の到着スケジュールを利島側で動かすことはできないため、まれにこのようなことも起こるそう。桟橋内を走り回りながら、少ないスタッフで定められた仕事を遂行しています。

このように、TOSHIMAでは利島を発着する定期船や貨物船の離着岸作業を担っています。旅客を乗せた船だけでなく、クレーン車によるコンテナの積み降ろしやフォークリフトを駆使した港湾内での荷捌き作業などの任務もあります。

貨物船からコンテナを引き下ろす作業

クレーン車の操作は現在は清水さんのみが操作

朝は早いが自分の時間も確保できるTOSHIMAの勤務形態

港湾業務は早朝からスタートすることが多く、朝4時台から勤務することもありますが、その分、午後は早めに終わります。船は365日運行しているため、会社が「休み」という日はなく、TOSHIMAの社員は、週休二日のシフト制で勤務しています。 台風など天候が大荒れになる場合は、前日から欠航が決まっていることもありますが、毎日の港湾業務自体が止まることはありません。

大型船運航日の現場社員の1日のスケジュールは、下記のような感じです。

*****
6:30 出勤・朝礼~下り大型船の入港準備
7:40 下り大型船入港~接岸作業(乗客の誘導・荷役作業)
8:00 大型船で届いた荷物の仕分け・確認作業
8:30 交代で休憩
9:00 本日入港する船の準備~上り大型船積載用のコンテナ用意・荷物の受付等
11:15 下りジェット船入港~接岸作業(乗客の誘導)
11:30 上り大型船の入港準備
12:45 上り大型船入港~接岸作業(乗客の誘導・荷役作業)
13:00 交代で休憩
13:30 午後の船の入港準備
14:40 フェリーあぜりあ入港~接岸作業(乗客の誘導・荷役作業)
14:50 上りジェット船入港~接岸作業(乗客の誘導)
15:30 片付け後に終礼・帰宅
*****

海老沢さん: 「勤務日や時間はイレギュラーですが、通勤時間がほぼゼロ、車で3分程度なので、お昼休憩は船の時間を避けつつ交代で回して、みんな家に帰って食べています。終業も3時半頃なので、その後は自由。僕は2歳の子がいるので、保育園に迎えに行って、家でゆっくり夕食を食べて…。子どもと遊ぶ時間もあるのがすごくうれしいですね」

「島の暮らしに必要な仕事」に携わっているという実感

利島に来る前は全く別の仕事をしていたという海老沢さんは、今の仕事について「島で生きるために必要な仕事という実感がある」と言います。

島の人々の役に立てることが嬉しい、と海老沢さん

海老沢さん: 「海況が悪い中、安全に作業をするための準備をして、無事船が着いたときには、「よかった!」という達成感がものすごくあります。船を利用するお客さんや、大事な荷物も預かっていて、島の人の生活に密接に関わっているので…。「ありがとうね」「いつもお疲れ様」と、島の人から言ってもらえることも本当にやりがいですね」

島民の生活に必要な荷物の積み降ろし。目に見えるかたちで貢献できるのがこの仕事

島で暮らしたい、一緒に働く仲間を募集します

株式会社TOSHIMAでは現在、ともに働く人を募集しています。

募集しているのは、海老沢さんと同じように、メインとなる利島港での港湾業務を担ってくれる人。具体的にどんな人に来てほしいのか、特別な応募条件などはあるのか、代表取締役の清水さんに伺いました。

清水さん: 「最初から特殊な資格や経験が必要なわけではないので、普通自動車の運転免許は持っていてほしい程度で、その他の特別な応募条件はありません。勤務上、重機操作などは資格が必要になりますが、僕も最初は何も持ってないとこから始めてるんで。始めてからいろいろと覚えてもらえれば、誰にでもできる仕事だと思います」

社員の募集について話す清水さん

清水さんとしては、今回お話をきいた海老沢さんや本田さんのように、若い移住者の仲間が増えてほしいと考えているようです。

清水さん: 「港湾業務は、やはり体力の必要な業務ですし、若い担い手が増えてくれるといいですね。それに、僕自身も、移住してから島の人たちにずっとお世話になってきてるので、株式会社TOSHIMAとして雇用を増やすことで、若い世代の移住者がもっと増えて、島の未来が広がってくれたら、少しだけでも恩返しができるんじゃないかなと思っています」

仲間を広く島外から募集する背景には、会社の未来だけでなく、島全体の未来も考えた清水さんの想いがあるようです。

清水さん: 「働き方は、都会での会社勤務とはかなり違うものになると思います。朝が早くて終わるのも早く、通勤時間もほぼゼロなので、より多く自分の時間を持てるようになるんじゃないかな。僕自身も、勤務後に趣味の釣りを楽しんでいますよ(笑)」

都会での勤務とは大きな違いのあるTOSHIMAでの仕事。 島の暮らしを支えるやりがい、責任ある業務と自分の時間との両立、そして小さな島ながらの人と人とのコミュニケーションなど、利島での仕事と暮らしが気になった方は、ぜひ問い合わせをしてみてください。

(後半:<暮らし編>に続く)

取材先

株式会社TOSHIMA

伊豆諸島の1つ「利島」で、島の人の流れと、物の流れを支える会社。島の玄関口である利島港の定期航路離着岸事業などの港湾業務を請け負う会社として、2015年4月に設立。現在、代表取締役を務める清水雄太さんをはじめ、多くのIターン移住者が、村の生活に欠かすことのできない役割を担っているという自負と責任をもって働いている。

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西村祐子

西村祐子人とまちとの関係性を強めるあたらしい旅のかたちを紹介するメディア「Guesthouse Press」編集長。地域やコミュニティで活躍する人にインタビューする記事を多数執筆。著書『ゲストハウスプレスー日本の旅のあたらしいかたちをつくる人たち』共著『まちのゲストハウス考』。最近神奈川県大磯町に移住しほどよい里山暮らしを満喫中。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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