協力隊OBが自らの経験と危機感から企画した合宿型キャンプ 「村楽ブートキャンプ」が目指すこと

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地域再生の“仕掛けニスト”として活動する東大史さん。一般社団法人村楽の理事をはじめ、北海道空知郡奈井江町ふるさと創生アドバイザーや福島県川内町復興むらづくり委員、徳島県三好市ハレとケデザイン舎取締役など、各地域におけるさまざまなプロジェクトに携わっている。

東さんが地域再生に携わるようになった経緯、そして、村楽が今年秋から始める地域おこし人材を鍛えるためのプログラム「村楽ブートキャンプ」について伺った。

リアリティを求めて森へ

2011(平成23)年、東さんは岡山県美作市に地域おこし協力隊として移住した。東日本大震災が起こった年だが、地域おこし協力隊になるにあたり、震災はあまり関係がなかったという。

「それ以前から、自分の暮らしとか身の回りのことに対するリアリティが無いことに課題意識を持っていました。元々は環境分野に興味があったんですけど、いざ環境について取り組む時に、その一番上流にあるのは何かって考えたら森だったんですね。森が水とか空気とか土とか、我々の身の回りを支える資源を作っていることに気づいて、現場で山を大切にする活動に注目してみようと思ったのがきっかけです。」

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▲協力隊として活動していた頃の東さん

東さんが地域と関わるきっかけは2008(平成20)年。森の中で合コンをするというイベントを山梨県で企画したことから始まった。

「その活動が婚活ブームと相まって大ヒットして、当時はよくメディアに出ていました。でもそのように取り上げられると、自分が目指している本質的な部分とは別の“合コンを推進する人”という見られ方をされるようになっていって、それは自分が目指している方向ではないし、そういう一面だけ切り取ってもてはやされる風潮はおかしいなと感じていました。」

違和感を感じながらも打開できずにいた東さんは、ある結論に至った。

「でもそれは自分の中に山や農業の実体験がないために、そこのリアリティを語れないからだと。そういう切り取られ方をされるのは自分の問題なのだと思って。そこで、山のことをきっちりやろうと、岡山県美作市に地域おこし協力隊として移住しました。」

 

地域おこし協力隊の活動で生まれた課題と新たな取り組み

東さんが美作市に地域おこし協力隊として派遣された当時は、まだ地域おこし協力隊の制度が始まって間もなく、体制も整っていなかった。

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▲協力隊として活動した岡山県美作市

「自治体側も地域おこし協力隊に何を依頼すればいいかわからない、地域おこし協力隊の方も何をしていいかわからない中途半端な状態で入っていくということを経験しました。」

このままでは良くないと、東さんは同じ境遇にあった全国の仲間と一緒に「村楽」というLLP(有限責任事業組合)を立ち上げた。

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▲村楽のメンバーと。2015(平成27)年3月に主催した「地域おこし協力隊裏サミット」というイベント会場にて

「地域おこし協力隊のような制度をうまく活用して、地域で若者が仕事を作っていくだとか、そこでどのようなライフスタイルで過ごしていけばいいのかとか、そういうところの整備や自治体の受け入れに必要な要素を整えていくっていうのが段々事業になっていきました。そこで2014(平成26)年に『村楽』を一般社団法人化したんです。」

岡山県美作市での活動の後、東北被災地の復興や、東日本での活動に携わるため、東さんは東京に戻ってきた。
そして、「WORK FOR 東北」という復興庁の制度の立ち上げなどを行い、現在は、ココロマチと一緒に自治体への地域おこし協力隊の提案や受け入れのサポート、協力隊が実際に地域に入っていくためサポートなどの活動を行っている。

「徐々に復興から地方創生へ、というのが全国的な流れになってきています。僕自身、内閣府から地方創生のための自治体のアドバイザーという形で北海道の奈井江町に派遣され、地方創生の戦略づくりを担っています。」

 

自身の経験と危機感から生まれた「村楽ブートキャンプ」

地方創生のために、まずやるべきことは何か。
「地域おこし協力隊として3年活動しても何も残らない。そういう人たちが続出するのではないか?」
東さんは、そんな危機感を感じているという。

「僕自身が地域おこし協力隊を体験して感じたことはもちろん、今の世の中の風潮がどうしても地方創生だ何だというところで、とりあえず若者を移住させればいいんじゃないと動いてしまっていることに危機感を抱いていて、それを解消するために『村楽ブートキャンプ』を企画しました。」

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「村楽ブートキャンプ」とは、地域おこし人材を鍛える週末強化合宿型キャンプだ。

「地域でのリーンスタートアップを目指して、試作をして、とにかく形としてアウトプットする。その上で、失敗でも成功でも何でも、フィードバックを受けて修正していき、高回転な形をつくって、それを世の中に出していく。そうしなければ、地域資源を活用したビジネスなんてできるわけがない。とにかく形にしていく、ということをコンセプトとして打ち出したいと思っています。」

今の地域おこし協力隊の課題は、自治体の予算ありきのため身動きが取りづらく、あっという間に時間が過ぎていってしまうことだという。
未経験分野には踏み入れるまでに時間がかかるため、たとえば「地元の食材を使ってカフェを開きたい」などの目標があったとしても、叶えられぬまま3年間を過ごしてしまい兼ねない。

「とりあえず下手でもいいので食のプロジェクトをやるんだったら、作って色んな人に食べてもらい、そこから声を拾っていく。お金はクラウドファウンディングとか資金調達の方法は多様な方法がありますから、行政の予算に頼る形ではないやり方でどんどんやればいいじゃんという考え方ですね。」

そういったことを「村楽ブートキャンプ」を通じて色々な地域おこしをしている人に広めていきたいという。

 

地域おこし人材を鍛えるキャンプのオープンソース化を目指して

今回の「村楽ブートキャンプ」はトヨタ財団イニシアティブプログラムの助成により実施される。
全国でやって欲しいというトヨタ財団の意向もあり、東日本・中日本・西日本の3つに分けて、それぞれ「食」と「住」について取り組む企画を立ち上げた。

「現在キャンプの実施が決まっている6カ所だけでなく、この内容はオープンソースにしようとしているので、ゆくゆくは全国で同時多発的に起こっているような形にしていくのが最終的な理想です。」対象とするのは地域おこし協力隊としてすでに活動している方など、実際にすでに地域おこしに関わる活動をしている人だ。

「住でいえば空き家問題をどうするかとか、食でいえば農業の第6次産業化など、社会課題として自分たちでは解決できないところを重点的に取り組む予定です。僕たちと外部の1、2名で講師を務め、2泊3日で15〜20人を予定しています。」

「食」のプログラムの場合、地域資源である農作物や水産品を加工して販売する6次産業化まで、1つのプロダクトについて生産から消費までを繋げることを目指す。 思っていることを形にする、地域おこし協力隊で一番必要な部分を実際に体験できるのだ。

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「僕から伝えたいのは、地域には色々な可能性があると思っているんですけど、形にして明確なものとして周りに見せなければ誰も巻き込めないし、それが将来の自分の仕事にもならないということです。自分の中のアイディアや考えを形にする“自分創生”をしなければ、地方創生なんていう大それたことはあり得ません。」

東さんの実体験を基に、地方創生を担う人材を育てていく取り組みがこの秋始まる。

 


「村楽ブートキャンプ」

スケジュール
■東日本
 食:岩手県釜石市 2015年9月25~27日
 住:東京都西多摩郡奥多摩町 2016年4月頃予定
■中日本
 食:三重県伊勢市 2016年5月頃予定
 住:岐阜県中津川市 2015年11月13~15日、2016年3月18~20日、4月15~17日
■西日本
 食:京都府京丹後市 2015年11月27~29日
 住:徳島県三好市 2015年11月20~22日
詳細・申込は村楽HPをご確認ください。

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取材先

東大史さん(地域再生プロデューサー、一般社団法人村楽 理事)

1977年米国生まれ。会社員を経て独立。2011年より岡山県美作市に地域おこし協力隊として移住し、棚田再生の集落営農化や都市農村交流の企画、自然エネルギー導入など様々な案件の実用化に携わる。同時に、地域おこし協力隊の地域横断型ネットワーク・村楽LLPを組織し、2014年には一般社団法人村楽を設立。「WORK FOR 東北」の事業立上げ、株式会社ハレとケデザイン舎の設立(徳島県三好市)などにも従事。北海道奈井江町ふるさと創生アドバイザーなども務める。ホームページ:http://www.sonraku.org/

大川 晶子

大川晶子OKAWA-Akiko

1986年、静岡県三島市生まれ。エディター・ライター。
京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科(近代建築史専攻)を卒業し、住宅やインテリア雑誌の編集部を経てフリーランスとして活動しています。たくさんの人・もの・ことに触れてその魅力を伝えることで、一人でも多くの方の暮らしをより豊かなものにできたらと思っています。

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