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2015年11月5日 清水美由紀

縄文時代の遺跡も残る長野県茅野市―「小屋フェス」で茅野市らしい地域の魅力を発信

7月下旬から8月上旬にかけて、長野県茅野市で「小屋フェス」が開催された。
会場にはユニークな小屋が建ち並び、おいしい食事や心地のいい音楽が来場者を楽しませていた。前身となった「小屋展示場」は、2014年に東京・虎ノ門を会場に、14棟の小屋を展示したイベントだった。

今回は東京を飛び出し、小屋が似合う大自然の中で行われた「小屋フェス」。どのような経緯で、茅野市が会場となったのか、町への影響はどうだったのか、茅野市まちづくり戦略室の三井さんと原田さん、移住推進室の田中さん、「楽園信州ちの」の朝倉さんの4名にお話を伺った。

茅野市は、諏訪湖のある諏訪市に隣接する市で、寒冷な気候を活かした高原野菜や角寒天の産地として知られる。また、「八ヶ岳」「白樺湖」「蓼科高原」「車山高原」「霧ヶ峰」など、有名な観光名所がいくつもある、自然に恵まれた豊かな地なのだ。

IMG_3682▲紅葉の蓼科湖

ただ、「八ヶ岳」や「蓼科」といった名所の名前が先行して知られているため、「茅野市」という行政の知名度はあまり高くないのだそう。

 そんな折、「茅野市で小屋フェスを」という話が持ち上がった。

茅野市は縄文時代中期の遺跡が多く確認されているエリア。「縄文のビーナス」と「仮面の女神」と呼ばれる土偶は、いずれも縄文時代の文化遺産として高い評価を受け国宝にも指定されている。

IMG_9805▲史跡公園内にある縄文集落の復元住居

縄文文化の竪穴住居と「小屋」―これは、親和性も高く小屋フェスを行うのに最適な場所であると、小屋をメインにしたフェスを行いたい主催者SuMiKaと、市外に向けたPRをしたい茅野市との互恵関係が生まれたそうだ。

1T1A4824▲​茅野市まちづくり戦略室の三井さん(左)と原田さん(右)

「地方創生の動きが全国で始まっていて、都会から人を移住させるとか、地域に人口を増やすといったことを、各自治体が始めていますが、『おいしい空気に水、おいしい野菜があります』というのだけでは差別化できない。差別化することが必須になりますが、その差別化も同じように考え、どの地方も同じになってしまいます。そうであれば、茅野市らしい、茅野市ならではの面白いことをやって、茅野市そのものを認知してもらうことがまず大切だと思って、小屋フェスをやっていただくことにしたんです。」

小屋フェス開催を決めた想いを、三井さんはこう語った。

開催前には、「人が集まらないんじゃないか」という意見もあったそうだが、実際には、9日間で14,000人超の来場者が訪れた。茅野市を訪れるきっかけとして、小屋フェスは成功だったといえそうだ。

当初の予想と違っていたのは来場者の年齢層。これまでは、移住というと、団塊の世代が多かったのだが、今回の来場者は違っていたと、楽園信州ちのの朝倉さんはいう。

1T1A4794▲楽園信州ちのの朝倉さんと​​茅野市移住推進室の田中さん

「移住の背景は、リーマンショックや3.11以降大きく変わったと思います。年配の方がゆとりを持って暮らすための移住というより、若い方たちが自分たちの暮らしをどうしたいか、物質的な豊かさよりも精神的な豊かさや子育て環境を考えて、移住を検討するようになってきました。移住は助走期間が長いものなので、すぐにというわけにはいかないと思いますが、今回来場した若い方たちが、将来、茅野の青空や気持ちのいい風を思い出してくれたら・・・と思っています。」

三井さんは茅野市の魅力について、こう教えてくれた。

「縄文のビーナスは日本最古の国宝で、5000年前のものなんです。つまり、5000年以上前から、ここには人が住み続けていたんですよね。それだけ、人が住む環境として適してるということなんじゃないかなって思うんです。確かに冬は寒いけれど、四季を感じて、自分も自然の一部なんだとを感じながら生きて行けるところが、茅野市の魅力なんだと思います。」

人生の大部分を茅野で過ごしているという原田さんは、こう付け加えた。

「小屋フェスの会場になった場所から見る八ヶ岳ってすごくきれいなんです。夕焼けがびっくりするほど美しいので、それを見にまた茅野に来てほしいですね。」

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大自然の中で小屋のある生活を想像し、今後の暮らしを考えるきっかけをくれた「小屋フェス」。

次回の小屋フェス開催は未定とのことだが、「次回があるなら、今度はもっと地元を巻き込んで、地元を上げたお祭りにしていきたい」と三井さんは意欲を見せている。

清水美由紀
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清水美由紀

清水美由紀フォトグラファー。自然豊かな松本で生まれ育ち、刻々と表情を変える光や季節の変化に魅せられる。物語を感じさせる情感ある写真のスタイルを得意とし、ライフスタイル系の媒体での撮影に加え、執筆やスタイリングも手がける。身近にあったクラフトに興味を持ち、全国の民芸を訪ねたzine「日日工芸」を制作。自分もまわりも環境にとっても齟齬のないヘルシーな暮らしを心がけている。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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