全てはLAMPからはじまった
ゲストハウスLAMPには、いつも笑い声が飛び交っています。ゲストハウスLAMP支配人の堀田樹さんは、2014年6月にゲストハウスLAMPの支配人として信濃町に移住しました。(※経緯はコチラ)
「まさか長野に飛ばされるとは思わなかったですね~。しかも社長の実家ですよ(笑)。でも、来てみたら水も空気もおいしいし、人も良いし、結果的には良かったです」
と、今の実感を語ります。
ここに集っているのは、林拓さん。林さんは、堀田さんが所属する会社、「株式会社LIG」の社長である「吉原ゴウ」さんの幼馴染み。高校を卒業してから、10年ほど東京で働いた林さんが信濃町に戻り、地元の建設会社で働きだした頃、「実家をゲストハウスに改装したい」と吉原さんから相談を持ち掛けられたと言います。
「元々地元の仕事がしてみたかったんですが、ログハウス専門の会社なので、なかなか県内に需要がなかったんです。だから、ゴウから話をもらったときはすごく嬉しかったですね」
もう1人は信濃町で設計の仕事をしている高遠慎悟さん。「LAMP」立ち上げには携わっていないという高遠さんですがプレオープン期間によく食事にきていた常連さんでした。
内装を見て、林さんの世界観に惚れこみ、当時構想中だったコミュニティスペース兼事務所「モトホンヤ」の施工を依頼。そこから、同業者同士、いろいろな現場でタッグを組むようになったそうです。
その3人を結ぶ共通点には「LAMP」の存在がありました。普段は忙しく、なかなかプライベートで会う時間がとれないという3名ですが、何かしらの接点があると、堀田さんは言います。
「高遠さんは昔から地元にいるので、『こんな人いない?』って聞いたら、すぐに良いレスポンスをくれるので助かっていますし、林さんはちょくちょくウチでご飯食べに来てくれては、ディスプレイを良い感じに直していってくれます(笑)」
約束をしなくても、顔を合わせられるというのはローカルならでは。今では直接的に、間接的に同じ企画に携わることも多い3名の始まりには「LAMP」の存在がありました。
信濃町の垣根を越えて交流が広がる北信エリア
「外向き」志向の3名ですが、信濃町全体はこれほど交流が盛んな地域ではなかったそう。5つの地区に分かれていた信濃町は、お祭りなども地区単位で行うほど、それぞれの結束が強いとのこと。しかし、少しずつその流れが変わってきているそうです。
高遠さんがコミュニティスペース「モトホンヤ」を作ったきっかけも、交流できる“ハブ”を作りたいという思いにありました。
「僕が独立したタイミングに時を同じくして、同じ境遇だった人が何人かいたんですけど、みんな『集まる場所がほしいよね』っていう話になって作ることにしました」と語る高遠さん。
50人規模のカレーパーティーなど、イベントに人が来るのはもちろん、その存在が気になって用もなく訪ねてくる人もいるとのこと。高遠さんの思い描いたとおり、交流の輪が少しずつ広がってきています。
また、「LAMP」だからこその化学反応も起きています。
支配人の堀田さんは、「地元の人がイベントをすると、集まる人もだいたいみんな顔見知りなので、同窓会みたいになります(笑)。今後は、地元の方々と信濃町以外の人たちとを引き合わせる方法を探っていきたいですね」
林さんは、「野尻湖の周りで、『朝にコーヒーを飲む会』を友達4人くらいでやっていたんですが、『LAMP』と共同で朝ヨガのイベントを企画したら、長野市とか他の地域からも人が来て40人規模になったこともありました」と、信濃町に端を発した交流の輪は、長野県北の“北信エリア”全体にまで広がっています。
そうしたプライベートでの活動が実を結び、仕事に発展しているケースも多いと話す林さん。長野市の方が信濃町に遊びに来ることも増えたそうです。仕事とプライベート、信濃町の内と外の良い循環が面白さを形づくっているのかもしれません。
信濃町には移住者を受け入れる素地がある
最近になって町を越えた交流が盛んになってきているという信濃町ですが、移住者を受け入れる素地は昔からあったと言います。
小学校5年生のときに信濃町に移り住んだ林さんは「黒姫高原や国際村はペンションや別荘地が数多くあったので、野尻湖周辺では特に、他の地域から移住してくる人が多かったんです。多いときだと、クラスの半数が転校生でしたし、僕自身もすぐに馴染めました。そういった意味では移住しやすい地域かもしれません」と自らの感覚を話します。
「誤解を恐れずに言えば、人がやや控えめなので、全体の調和をとれる人っていうよりは、いろんな人を巻きこんで、ゴリゴリと面白いことができる人が向いているかなとは思います。あとは、懐に入れる感じの人かな(笑)。」と話す堀田さん。
高遠さんは、「堀田君も言っているけど、良い発想を持っている人は今までもたくさんいたと思うんです。なので、どんなにかっこ悪くても実行に移せる人がいてくれたらいいなって思います」と、実感している思いを語りました。
移住者を受け入れる素地がある信濃町。外から来る人に求められているのは、アイデアを実行に移せる積極性に尽きるのかもしれません。
自分が楽しめば、きっとみんなも面白い
ユニークな発想で新しい企画を打ち出していく皆さん。「面白いことをしよう」というモチベーション。気負わず、まずは自分たちが楽しむ。そういったマインドだからこそ、息切れすることなく、企画を打ち続けられるのかもしれません。
「野尻湖フェスがやりたいんです。このあたりにはちょっとクセのある面白いおじさんが多いので、そういう人を呼びたいと思っています」と話す林さん。
堀田さんも、「とにかく少しでも多くの人を巻き込みたい。交流したいけどなかなか自分から入ってこられない人もいると思うので、そういう人たちでも入ってきやすいようにしていきたいと思っています。」と抱負を語りました。
その後も、立ち上げたいイベントの規模感や費用感などの話が飛び交い、時折、会話に笑い声が乗ります。自分達が楽しんでこそ、良い企画が生まれる。彼らの面白いことをしようというマインドが体現されている瞬間を目の当たりにした気がしました。