まず、「メサ・グランデ」のお店についてご紹介ください。
「メサ・グランデ」は、一言で言えば、「地産地消の八百屋カフェ」です。店頭は八百屋さん、中に入るとその野菜を使ったメニューを食べられるというレストラン・カフェになっています。もともとは、地元の農家さんとのつながりから生まれたお店なんです。
実は、うちのお店は「ぐらすかわさき」という、まちづくり系のNPO法人が運営していて、「地元の良さを発見して、より心豊かに暮らすためにはどうすれば良いか」を考えながら、区役所からの委託事業として「たちばな農のあるまちづくり」というものをやってきました。
その中で、ファーマーズマーケットや援農(農家さんのお手伝いボランティア)を5年ほど前からやっていて、そこから農家さんとの信頼関係を作りあげ、一緒に八百屋カフェに協力してくださるという方を増やし、開店にこぎつけました。今こうやってできているのも、農家の方がお店まで野菜を持ってきてくださるからなんです。
メニューに使っている野菜はすべて地元産なんでしょうか?
「地産地消」と言うからには本当はそうしたいんですが、季節によってあるものと無いものがありますから、全部というわけにはいきません。ただし、基本的には旬の野菜を意識していまして、冬なら冬の野菜、ということになりますから、冬はどうしても根菜類が多くなったりはします。店頭に並んでいる野菜や果物は、すべて地元の川崎市内で穫れたものです。
地元の野菜ならではの特徴、栽培方法の特徴などはあるのでしょうか?
敢えて言えば、「多品種・少量栽培」ということでしょうか。代々農業をやっている方がほとんどですから、自家用にそういう作り方をする方が多いんです。収穫したものは、主に麻生区の「セレサモス」というJAの直売所や北部市場に出されている方も多く、地元のお店に並べたり自分のところで直売をしている方は少数なんですね。でもせっかくですから、地元の高津区内で食べるのがいいと思うんです。
ですから、私達がこうして店頭で販売することで、地元の方に地元の野菜をより多く食べてもらうことができ、地元のことをより良く知ってもらうきっかけも作れます。それを通して、地元の人が一体になって盛り上がれれば良いな、と思っています。
佐藤さん自身が農業に興味をもったきっかけは何だったのでしょう?
もともと私も川崎の出身ですが、いま住んでいる多摩区は結婚してから移ったところなので、近くにほとんど知り合いがいなかったんです。でも、最初は孤独でしたが、あるきっかけでそこに友達ができるようになったら、すごく楽しくなってきたんですね。地元のことも好きになれました。
私はそれまで「地元」ということをしっかり意識したことが無かったんですけれど、“つながり”の無いところに“新しいつながり”を生むことができると、その土地に愛着を持てるということを、身を持って感じました。それが「農家の皆さんとつながりたい」と思ったきっかけでしょうか。
「メサ・グランデ」も、地元の人が集まってごはんを囲むことで、農家の人や地元との“つながり”が生まれて、もっともっと地元に愛着を持っていただけるようになればいいなと思います。
お客様の年代構成はどんな感じでしょうか?
一番多いのは、お子さん連れのお母さん方ですが、そのさらにお母さん世代、60代以上の方も多いですね。9割ぐらいは女性のお客様でしょうか。住宅地で平日しかやっていないので、必然的に女性が多いということもあると思います。
特に女性向けの店づくりをしているわけではありませんが、スタッフが女性だけで、「お野菜を沢山食べてほしい」ということでやっていますから、男性だと少し量が足りないと思われるのかもしれませんね。
営業時間は朝の9時から21時まで、ノンストップでやっていますが、特にランチタイムはドリンクが飲み放題サービスで付きますから、人気が集中します。「旬野菜たっぷりプレート」というワンプレートの定食メニューを出していまして、肉もしくは魚料理から1品、お惣菜から3種類、サラダ、ご飯、汁ものという内容です。ご飯は玄米か白いごはんかを選べます。
今回、「ココロココ」の東北食材を使ったフェアにご協力いただきましたが、どのような思いで参加されましたか?
うちも「地産地消」ということで、「農家さんの顔が見える」ことを大前提にしてやっています。今回はことりさん(「菜園ことり」・バジルペーストの生産者)と菊池ご夫妻(「勘六縁」・お米の生産者)というお二方の食材を使ってほしいという話でしたが、かなりしっかりとサイト上で紹介をされていたので、どういう方がどういう思いで作ったのかもよく分かって、うちのコンセプトともマッチすると思い、参加することにしました。
実際に、お客さんからの反応はいかがでしたか?
ことりさんのバジルペーストはとても好評で、お客様からも「美味しい」という声を沢山いただきました。私も食べてみましたが、シンプルで、塩、にんにく、バジル、オイルの4つの材料で“素材勝負”する感じがすごくいいと思いましたし、色もきれいですよね。バジルの香りがダイレクトに伝わってきますから、人によっては苦手な方もいるかもしれませんが、私はとても美味しくいただきましたよ。
お米についても、うちの店でいつも使っている庄内産のお米もとても美味しいんですけれど、それとはまた違う味と食感で、「同じお米でもこんなに違うものなんだな」と思いましたし、「亀の尾」という品種の背景にすごく深い歴史があることも聞いていましたから、一粒一粒が愛おしい気持ちになりました。
お客様の中には「言われなければ違うことに気づかなかった」という方もいらっしゃいましたけれど、このお米のことをご説明したら、「ぜひ買ってみたいです」という方もいらっしゃいました。
最後に、フェアに参加した感想を一言お願いします。
農家さんにとっては「実際に食べたお客さんから感想を聞く」ことがモチベーションになる、と常々思っているので、私達もできるだけお客さんから感想を聞いて農家の方にお伝えするようにしていますし、毎朝農家の方から「この野菜はね…」ということも聞くように心がけています。お客様と農家さんの仲立ちをして、それを伝えることが私たちの役割だと思っていまして、今回の企画も、それが地元の生産者であるか遠くの生産者であるかという違いだけなんだと思います。次回やる時には、もっとしっかりと、生産者さんの紹介をするコーナーを作ってみたいですね。
こうやってお店をやっていても、最近は農業に興味がある人が増えている感触がありますから、今後はお店の企画として、農家の方を交えた食事会や交流会などもやっていきたいと思っています。