丸橋です。
青森県八戸市で開かれている朝市に来ました。
朝市と言っても、なんと300軒を超える出店がある朝市です。
日本最大級。
ここ八戸では、この規模の朝市が冬期間を除く毎週日曜日に開かれています。
見てくださいこの人波。
見てくださいこの美味しそうな焼き餅。
見てくださいこの美味しそうな虫グミ。
港らしく新鮮な魚介類や、近郊で採れた新鮮な野菜・果物だけでなく、行列のできる唐揚げ屋さんがあれば、美味しいコーヒー屋さんもあります。
お店が並び始めるのは朝5時前ごろ。
7時前後が人出のピークで、毎回数万人の方が訪れるんだとか。
売ってるものも年齢層もだいぶ違いますが、GWの竹下通りくらいでしょうか。
観光客はもちろん、地元の方もたくさん。
毎週毎週、なんのためにこんなにも人がやってくるのでしょうか。
魅力たっぷりでカオスな朝市(の一部)を見ていきましょう。
まずはこのワルそうな雰囲気を漂わせた皆さん。
取材でなければ笑顔の早歩きで立ち去るレベルです。
集まってくる目的は、毎回午前8時にこの記念写真を撮ること。 「8時ダヨ!全員集合!」が合言葉です。
中心になっているのが、バイク雑誌の表紙を飾ったこともあるという佐藤ラリアさん。
朝市では唐揚げとコーヒーを売っています。元々は、ラリアさんのバイク仲間が、朝市のお店に徐々に集まりだしたのがきっかけでしたが、いつの間にか午前8時に記念写真を撮ることが恒例。その写真がSNSで拡散されるとさらに仲間が集まるようになったといいます。
「見た目が怖いので敬遠されちゃうこともあるんだけど、バイク乗りはみんな気のいい連中。県北や県外から来る人もいる。」そう話すのが、長年この集まりに参加している戸草内(とくさない)さん。市内でラーメン屋を営んでいます。
「今はこの辺りのバイク乗りにとって、この写真に写ることが一種のステータスになっている」
そうして多い時には30人ものバイク好きがあつまる朝市の名物になりました。
こんな感じで、朝市をきっかけにして同じ趣味の人々が出会いつながり、コミュニティが出来上がっているんですね。
にしても本当に声かけるの怖かったですよ。
続いてお話を伺えたのは、デザイナーの高坂真さん。
コーヒー屋さんの店先で、手ぬぐいを売ってました。
この柄、とある意外なものがモチーフになってます。なんだと思います?
正解は「ウミネコのフン」。八戸市にある蕪島は、ウミネコの繁殖地として有名らしく、その蕪島の周りはウミネコのフンが上空から降ってくる一種の恐怖スポットなんだとか。
この柄は、コンクリートに飛び散ったウミネコのフンを写真で撮影し、取り込んで、色を加工したもので、何とグッドデザイン賞を受賞しています。
「手ぬぐいを売り始めて、なかなか知名度が上がらなかったのですが、こちらの朝市で、手売りを繰り返すことで徐々に知られるようになってきまして、卸先も見つかりました。今後は企業と一緒に組んだりして、地域のために役立つものをつくっていきたいと思っています。」
朝市では、出店者同士での思わぬコラボも生まれていました。
なかむら製菓さんは、もともとお隣のコーヒー屋さんとコラボしたコーヒー羊羹を売っていたそうですが、さらにお向かいのニンニク屋さんとコラボ。出来上がったのが「黒ニンニクコーヒー羊羹」。
もとのコーヒー羊羹をニンニク屋さんが黒ニンニクと一緒に食べたところ思いついたというこの商品。すごい美味しいんです。
今では人気商品で、お話を聞いた8時すぎ頃には既に売切れ。
「また東京から買いにきて」
照れながらも一緒に写ってくれたお父さん、お母さん、ありがとうございました。
先ほどの高坂さんのように、朝市を一つのビジネスチャンスと位置づける方は他にもいらっしゃいました。
朝市の端の一画にある「八戸サバコロ」を売るテントです。
「八戸といえばサバ」と言われるほど、八戸はサバがおいしい街。
「サバコロ」はサバをご飯に練りこんだライスコロッケで、チーズと薬味が香ばしい。揚げ物が辛くなってきた人でも軽くいけちゃいます。朝市の食べ歩きにもぴったりです。
開発したのは、市内の飲食店で料理長をしている白川佑希さん。
以前は埼玉県でお店を経営していましたが、2011年の東日本大震災で、実家のある八戸が被災。戻ってみると被害は思った以上だったといいます。
「どうにかして被災者を元気づけられないかと考え、たどり着いたのがこのメニューでした。」 「八戸のサバを使って新しい名物を作れれば、仕入れ先にもお客さんにも喜んでもらえる。最初はお店で出していたんですが、さらに広めたいと思い多くの人が来てくれる朝市に出すことにしました。ただ、実はサバのことそこまで好きじゃないんですけどね・・(笑)」
まさかの発言も、食と地元への愛でむしろプラスです。
「地元のものを使って地域に貢献する、雇用を生む、元気を生む。この3つを大事にしています。まずはサバコロを”朝市の鉄板”にすることが目標です。」
小さなサバコロの中には白川さんの熱い想いがぎっしりでした。
地域に根付いた朝市は、買い物・商売だけでなく、おしゃべりや交流、地元への恩返しの場でもあるんですね。
「常連になればなるほど、買い物以外の目的ができる」(今回、案内してくれた地元の方談)
また訪れた時どこに行こうか、何があるのか楽しみで仕方ないです。
朝9時すぎ、朝市はほぼおしまい。辺りでは片付けが始まっていました。
バイタリティの巣窟、「八戸舘鼻岸壁朝市」。
年内の開催は12月末までとのこと。是非、朝一番の元気をもらいに訪れてみてはいかがでしょうか。