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2015年7月29日 西嶋一泰

若者たちを魅了する津軽半島最果ての祭り 大川平「荒馬踊り」

青森県の津軽半島の先端に位置する今別町。その今別町にある大川平は人口約600人、その2/3以上が65歳以上という、高齢化の最先進地域です。そんな大川平の祭りに毎年、東京、名古屋、京都、そして遠くは大分から学生たちが駆けつけます。彼らは、大川平の「荒馬踊り」に魅せられ、この本州最果ての地にまで毎年足を運びつづけ、今年で15年。彼らを魅了しつづける祭りの魅力とは何なのでしょうか?

荒馬 夫婦

「荒馬踊り」は、男性が衣装をつけ「馬」となり、女性がその馬の手綱を握る「手綱取り」となり、男女がペアになって踊る日本では珍しい男女ペアの踊りです。地元では荒馬がご縁で結婚されたご夫婦もおり、アツアツの荒馬も見ることができます。

平山久志

振りを覚えるだけなら1日で習得できるシンプルな踊りですが、その踊りを30年、40年かけて磨き続けているツワモノたちが地元にはごろごろいます。なかでも生きる伝説となっているのが荒馬の「師匠」平山久志さん。70歳を越えた今でも県外からくる若者たちに熱心に指導を行いつつ、自らの荒馬に磨きをかけています。

平山久志氏 留学生に指導

祭りでは3分程の踊りを、集落じゅうの家の前で踊ります。荒馬の行列には、太鼓、笛、鉦といったお囃子に、扇型の「ねぶた」も加わり、なんとも賑やかな雰囲気で静かな田園風景のなかを歩いていきます。

荒馬沿道の風景

この祭りに通っている若者たちの正体は、立命館大学や名古屋大学の日本の踊りや太鼓に取り組むサークルのメンバー。一部学校教育に取り入れられた「民舞教育」のプログラムの一つに、この今別町の荒馬踊りがあり、それがご縁で地元を訪ね、祭りに参加するにまでいたりました。

SANYO DIGITAL CAMERA

荒馬が終われば、文化会館で楽しい宴の始まりです。40畳はある会館に、何台もビールサーバーが並べられ、所狭しと地域のおじさんおばさんたちに、県外の学生たちが入り混じり、再会と祭りの成功を祝いながら杯を重ねていきます。そして夜が進めば、地域の方々のお宅に若者たちがお風呂をいただきにいきます。お風呂を待っている間にも会話がはずみ、お互いの地域の話題から、恋愛相談に、進路の悩み…。荒馬から始まった縁が、人と人との縁に結び変わっていきます。

県外の若者と地元のおじさん

大学を卒業しても大川平へ訪れる若者も多く、それは荒馬の時期に限りません。 お盆や、収穫祭、お正月、さらには新婚旅行で大川平を訪れた若者までいます。祭りから紡がれる縁が育ち、地域の一つの軸となっていく大川平の荒馬、ぜひこの夏訪れてみてはいかがでしょうか。

荒馬 集合写真

大川平荒馬踊り
日程:2015年8月7日(金)、8日(土)、9日(日)
場所:今別町大川平地区
最寄駅:JR津軽線の「大川平駅」
問い合わせ:今別町観光協会(0174-35-2014)

西嶋一泰
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西嶋一泰

西嶋一泰大分県別府市生まれ、東京都東久留米市育ち。株式会社FoundingBaseローカル・マネージャー。祭り研究者から、縁もゆかりもない「鳥取」へ移り住み、地域の課題解決に向けて奔走中。「伝統」の枠にとらわれない、地域のディープな文化が持つ「ダイナミックなエネルギー」を今の世に広めるべく活動中。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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