記事検索
HOME > はたらく > 農林漁業 >
2015年8月12日 OSHULIFE

【農と人をめぐる#6】米農家が仕掛ける田んぼアート

奥州市水沢の常盤地区にある“やぐら”から見える田んぼをキャンバスに描かれる伝統芸能の風景やアニメのキャラクター。

今年で8年目となる田んぼアートを仕掛ける米農家の方を訪ねました。

平地を生かし、米に特化して農業を行っている森岡さん。周辺の農家が減るなど、農業を取り巻く環境が変化する中で、「生産者は米を生産するだけではなく、6次産業的な観点で自家農産物をアピールし、マイブランド・奥州ブランドをつくって売っていかなければいけない」と感じていました。

そんな中で、異なる色の稲を組み合わせることによって、田んぼに絵を描く田んぼアートに出会います。

098A1825

「田んぼアートは“なにか農業者にできることはないか?”というところから始まったイベントでした。いろいろ探るのに3年かかり、そのうち1年は青森でやっている田んぼアートの事例を視察しながら準備を重ねました。何もないところから始まったので、いろいろな種類の稲のタネの確保、絵の構想などをやっていって、最終的にはイベントとして市民を巻き込んで行うことになったんです。」



098A1825

毎年、半年も前から構図やラフスケッチなどの準備に取りかかり、たくさんの工程を経て完成する田んぼアートは、ただ単に見せるだけではなく、実際の田植えや稲刈りもイベントとして行っています。

一般に、田んぼアートは農協や地方自治体などがスポンサーになって開催されるケースがほとんどですが、森岡さんの田んぼアートは、それらの資金源にできるだけ頼らない形で行っている全国的にも珍しい事例。

大変なことも多いそうですが、回数を重ねるごとにアートとしてのレベルが上がり、観覧者からの期待が高まっているのを感じながら活動を続けているのだとか。

森岡さん自身、田んぼアートの開催にとどまらず、次の展開として田んぼアートにも使われている朝紫(あさむらさき)という品種の商品化を考えているそうです。



098A1825

「朝紫は、一般的には黒米といって、古代米の部類に入るものです。黒米はひとめぼれなどの一般の米と混ざらないよう、すべて手作業で行わなければいけないので、たくさんの量は作れない。」

と、農作業は一苦労の様子。

「でも、健康に良いとされるポリフェノールが入っていて、炊飯器に小さじ一杯入れるだけで赤飯のように色がつくんです。これを使った6次産業化商品として、地元の農協とホテルが共同開発した古代米ロールケーキもあります。」

このような森岡さんの活動と思いが、奥州市の地域6次産業化のめざすところと重なり、市が設置した地域6次産業化推進チームに入ることになりました。

地域6次産業化については、1次産業、2次産業、3次産業の3つの業態がうまく噛み合って長く続くことが大事だと考えているそうです。



098A1825

「我々農家は売れなくなったからといって米を作るのを辞めるわけにはいかない。どう継続させていくかっていうのが、本当に難しい。すべて自己責任の中でやって行かなければいけないし、失敗したことを誰かのせいにもできない。」

そんな強い意識と農業経営を常に考えている森岡さん。地域おこし協力隊として共に働きたい人材については、「年齢に関係なく発想が柔らかい人」とのこと。

「前向きで、行動力のある人がいいよね。6次産業化に思いのある人。そういう人は思いつめた時に発想が浮かぶ。追いつめられたときに大事なのは想いなんです。」

米づくりを原点にしながら、アートという付加価値を開拓し、イベントや商品にすることで農業の可能性を広げている森岡さん。

今年も森岡さんの田んぼアートは見ごろを迎えています。



OSHULIFE
記事一覧へ
私が紹介しました

OSHULIFE

OSHULIFE岩手県奥州市周辺の情報をお届けするウェブマガジン。「住みたい街」と「帰りたい地元」づくりをコンセプトに地域のヒト・モノ・コトを発信しています。

人と風土の
物語を編む

 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

人と風土の物語を編む