現役茨城大学生が集まり起業へ
2005年、「ユニキャスト」創業当時は三ツ堀さんを含め、スタッフは皆学生だったという。「みんなまだ学生でしたので、同級生や後輩などプログラムの仕事に興味ある人に片っ端から声をかけてスタッフを集めました。」と当時を語る三ツ堀さん。創業から10年が経ち、現在は正社員、インターン生含め約30名の規模に成長した。同社では、創業から今に至るまで、テクノロジに魅せられた個性あふれるスタッフが集まり日々研究開発を重ねているという。
では、実際に同社ではどのような業務を行っているのだろうか?
『事業は大きく分けると4つに分類されます。1つは、「クライアントワーク事業」です。これはいわゆる受託開発というものでして、既存のものではなく一品ものでお客様の要望に応じたシステム開発を行います。例えばホームページを作りたいというデザイン寄りの仕事もありますし、独自のブログシステムを社内でつくりたい、オリジナルのショッピングサイトをインターネット上に設置したい、不動産会社用の物件検索システムを構築したい、スマートフォンやタブレットの業務用アプリを開発して効率化を図りたいなど多岐に渡ります。』
『また、今お話ししたようなシステムを構築するとインターネットサーバーが必要になってきます。私どもでサーバーを預ける専用の建物であるデータセンターにそれらを用意して、クライアントに使用して頂くというものが2つ目の「インフラ事業」になります。これは創業時からずっと続けている事業ですね。』
『3つ目の事業は、「自社サービス事業」です。通常はお客様から要望や相談を受けて開発をするのですが、この事業は逆で、こちらから今世の中に足りないものは何か、今必要とされているものは何か、を想定してシステムやプログラム開発を行い、世の中のニーズに合わせながら作り上げていきます。代表的な例ですと、Softbank株式会社が提供するパーソナルロボット「Pepper」を使用したもので、カーディーラーや銀行に向けの受付案内アプリケーションや案内所・駅・市役所向けの観光案内アプリケーションを提供しています。』
『最後の4つ目の事業は、「CSR事業」です。これは地域に根ざす企業として地域に対してどのような貢献ができるかを考えるものです。その基点として、茨城県内初の地域貢献型シェアハウス「コクリエ」を、地域コミュニケーションの場として活用し、新しいコミュニティを地域の皆様と共に創る(Co-Creation)試みをしています。』
企業が社会に対して責任を果たし、社会とともに発展していくための活動が「CSR」だ。同社は今後もCSRの取り組みを積極的に行っていくという。
地域とともに創る新たな地域社会づくり
今回は、地域貢献型シェアハウス「コクリエ」について詳しくうかがった。「コクリエ」は、三ツ堀さんが大学の非常勤講師として学生と接したことがきっかけで出来たという。
▲地域貢献型シェアハウス「コクリエ」外観
『私は茨城キリスト教大学で非常勤講師をしており、教え子の学生の中から将来私たちのライバルになるような起業家を育てよう、見つけ出そうという想いで教壇に立っていました。』
ところが、ある日学生たちと話をしていた三ツ堀さんは、教え子である学生たちが必ずしも起業家を目指して勉強をしているのではない、ということに気づかされる。更に「起業してお金儲けをするのではなく社会の役に立つ仕事がしたい。」という学生たちの純粋な想いが、三ツ堀さんの心を動かすことになる。
『なるほど!と思いまして、早速、学生たちと共に地元を中心に、地域のために活動をする『地域貢献サークル「HEMHEM」』というものを立ち上げました。サークルを立ち上げたところまでは良かったのですが、部室が無い日々が続きまして、大学内の部室の空きですら当分の間は見込めない状態でした。』と、三ツ堀さんは当時の苦労を振り返る。
▲学生や地域の方の協力があり「コクリエ」は完成したそう
『待っていても何も始まらないので、部室が無いのなら建ててしまおう!と一発奮起しましたね。そして、せっかく建てるなら学生が住めて社会人も出入りする地域の人のコミュニケーションが取れる場所にしたい、みんなを元気にするような場所を作ろう!と思いました。』
「コクリエ」が学生と企業の架け橋に
そうして完成した「コクリエ」は、現在、近隣大学と共同で行う地域貢献活動や地域イベントの開催、地域起業の経営者との交流会など、幅広く利用されている。学生からは、学校では学ぶことができない地域の企業や社会について学ぶことができると好評だ。
▲完成当初の「コクリエ」内リビング
「コクリエ」には現在、茨城大学や茨城キリスト教大学の学生、20代から30代の社会人が宿泊して交流を行っている。ここでは地域の学生と社会人が接する機会が多く、地域企業交流会や、ビジネスマナー勉強会などが多く開催されている。
『若手経営者や次期経営者らが集まる、ひたち立志塾とのコラボ企画で、学生のための企業交流フォーラムを開催しました。学生と地域企業が気軽に交流を持てる場という事で、ひたち立志塾メンバーと学生達が本音で聞いたり語ったりと、普段では中々出来ない交流をはかる事が出来たと思います。』と三ツ堀さん。
▲コミュニケーションを取りやすいスペースが多数ある
学生からは、今後の就活の参考にしたり、地元の中小企業の事を知ることができたとの声や、採用試験の時には聞くことができないような「どういう人材を企業側は求めているか?」など、一歩突っ込んだディスカッションができたとの声があり、手応えを感じた学生も多かったようだ。
『学生には、就職活動の際に初めて将来の事、会社の事、地域の事を考え始めるのではなく、早い段階からしっかりと社会に目を向けて自分が社会や地域に対して何ができるのかを考え、社会人になる準備をして欲しいですね。そして社会人には、身近な先輩として夢に向かって勉強する元気ある若者にアドバイスをして、将来的に一緒に仕事ができるチャンスを与えて欲しいと思っています。』
『地元の大学から地元の企業へ採用に結びつくことができれば、それが何よりの地域貢献や地域の活性に繋がることだと考えています。』「コクリエ」を利用する学生や社会人に向けての想いを、三ツ堀さんはこう語った。
学生と社会人が交流することによって、新たなチャンスや雇用が地元で生まれ、地域の活性につながる、というプラスの作用が生じるというのだから興味深い。
新しいコミュニティを「コクリエ」から
「コクリエ」での交流は地元の企業だけに限ったことだけではない。地方で実際に活躍している人々をゲストに呼ぶ、トークイベント「チホウヲタノシム」も予定している。
『2016年9月28日が記念すべき第1回です。常陸多賀のシンボル的な建物、元商店「かどや」がリノベーションされシェアオフィスになっているのですが、そこにオープンした「森のパン工房」森 基至さんと「café cream」の小室 文乃さんをお呼びして、シェアオフィスや商店街で店を営む楽しみや、地域との関わり方など生の声を聞くことができるイベントです。このイベントから新しいつながりやコミュニティが生まれてほしいですね。』
さらに「コクリエ」では、地元の子どもたちを呼びハロウィンパーティーで交流を深めたり、「ちょっとだけ住んでみたい」という人向けに宿泊体験を受け付けていたりと、地域にオープンなのも特筆したい。
『「コクリエ」は住宅地の一画にあるのですが、この建物ができて街が明るい雰囲気になって良かった、というお声を地域の方々からいただきました。若い学生や社会人が出入りしているので地域に活気が生まれているのだと思います。』
今後も地域を大切にしながら、地域で働く事ができる環境を整え、企業と連携して地元の雇用を増やしていきたいと三ツ堀さんは熱く語った。
人の優しさに触れることができる街、日立市
日立市は、海や山などの自然がたくさんあり、海産物や農作物など食材の宝庫であることが有名だ。県内神栖市出身だという三ツ堀さんから見て日立市の魅力とは一体何なのだろうか。
『私は日立市に来て、人と人との横のつながりが強く、人の優しさに触れることができる街だな、と思いました。』
ここ日立市は、「日立製作所」の発展と共に成長してきた街だ。また市内には茨城大学、茨城キリスト教大学の2つの大学があり、若い人たちが毎年多く入ってくる活気のある街であることも利点である。
『学生や若い人たちが、ここ日立市で新しい事にチャレンジできて、それを応援できるような土壌を作っていきたいですね。地域を大切にしながら最先端の仕事ができる、そんな魅力ある街にしていきたいと思います。』
テクノロジを通じて「驚き」と「感動」を創造し、人々の「夢」と「笑顔」を支えていくのが同社のミッションであるという。企業が、地域に根ざし地域に貢献し共に育んでいくことが、人々が「笑顔」になる街を創る大切な一歩になるに違いない。