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2017年12月23日 ココロココ編集部

『南房総2拠点大学』現地講座イベントレポート【後編】

10/21(土)と11/11(土)の全2回、南房総市で『南房総2拠点大学』現地講座が開催されました。このイベントでは、ローカルビジネスを「小商い」コース、「社会起業」コース、「メディア」コースの3つに分け、参加者それぞれのニーズにあったビジネスを学び、新たなアイデアを考えました。

Day1の様子をお伝えした前編に続き、後編では、Day2の全体発表会の様子を中心にお届けします!
→【前編】はこちら

シラハマで3週間ぶりの再会

■10:00 「とみうら元気倶楽部」に集合

南房総ではこの日の明け方までひどい嵐だったそうですが、参加者たちが到着する頃には青空が広がっていました。富浦地区の複合施設「とみうら元気倶楽部」に集合したあと、全体発表の会場となる「シラハマ校舎」に移動します。

コースごとに総仕上げ!

社会起業コース

最終調整をする社会起業コース

■11:10~14:00 コースごとの講座

シラハマ校舎到着後は、各会場に分かれて最後の講座を行いました。小商いコースと社会起業コースは、それぞれ校舎内にあるココロマチのオフィスと、お試しオフィスに移動します。メディアコースは、車で5分ほどの場所にある「白浜コミュニティセンター」に向かいます。

社会起業コース
さっそく「観光」「農業」「獣害」の3チームに分かれ、ビジネスモデルを練り上げます。獣害チームは地元の猟友会の小原さんをお招きし、現場のニーズを把握。動物は常に移動するいうことや、仕掛ける罠の数を確認していました。

獣害チーム

猟友会の小原さんの話を聞く獣害チーム

途中で、講師の東さんから「都市部の人の心をつかむためにはネーミングも大事」などアドバイスをいただきました。本番まで余裕のあるチームは、発表時間10分の尺におさまるようプレゼンの練習に取りかかっていました。

小商いコース
初めに、第2回からの成果をみんなで発表し合い、自分以外のメンバーや伊藤さんからのフィードバックをいただきました。小商いコースは人数が多いため、このプレゼンで全体での最終発表を行うメンバーも選ばれます。

お互いの発表を聞きます

一人目:川鍋さん
お酒とたき火を組み合わせた「里山バー」を提案してくださいました。第1回が終わった後に、試験的にバーを開いてみた感想なども併せて発表していました。

二人目:元沢さん
南房総でコーヒー豆の焙煎所を開きたい元沢さん。実際に、コーヒー豆を焙煎して持ってきたという元沢さんの発表では、部屋中にコーヒーのいい香りが漂っていました。

三人目:川口さん
解体現場から出る廃材を再活用するプロジェクトを発表してくださいました。建築関係のお仕事を活かしての提案でした。

小商いプレゼン

四人目:松井さん
八升豆というなんと元禄時代からあった豆を使った料理での小商いを発表してくださいました。実際に、八升豆の味噌とあんこを作ってきてくださってみんなで試食させてもらいました。とても美味しかったです。

五人目:田村さん
「南房総の賑わいを再興したい。」という田村さんは、まきを売ることを中心とした便利屋さんのような小商いの提案でした。

小商いプレゼン

六人目:宮寺さん
小商いコース最後の発表は、南房総でとんかつ屋さんを夫婦で開きたい宮寺さん。都内で長年飲食店をしていた経験と技術を生かし、食材はもちろん、調理法やお店のロケーションまでとことんこだわったお店作りを発表してくれました。

この後は、投票&結果発表!川鍋さん、元沢さん、宮寺さんの三人が見事選ばれました。昼食の鰯丼のおいしさに感動しつつも発表準備を進める3人。メンバー同士でのブラッシュアップも活発に行われていました。参加者同士で繋がりもたくさん生まれているようで、自分の小商いを実現させるために本気でディスカッションしている姿が熱く印象的でした。

小商いプレゼン

元沢さんがコーヒーを淹れてくださって、みんなで美味しくいただきました。既に、「購入したい!」との声も多く挙がっていました。

元沢さん

コーヒーを淹れてくれた元沢さん。部屋に入るとふわっといい香りがしていました

メディアコース
10月開催のDay1では、A、Bの2チームに分かれて具体的なテーマ決めを行った「メディアコース」の参加者たち。Day1終了後はチームごとにSNSでグループをつくり、議論を重ね、ひととおりプレゼン資料を仕上げたうえで、Day2にのぞみました。

Day2当日は、午後の発表に向けて、白浜コミュニティセンターの会議室にて、プレゼン練習と 企画書の修正作業が行われました。

保護猫チーム

フィールドワークを通して、改めて企画を練るAチーム

Aチームの企画は、野良猫を保護し、猫と触れ合える場所をつくる「保護猫ゲストハウス」。
地元メンバーが多いという利点を活かして、実際にフィールドワークを行い企画を詰めていました。

スタンプラリーチーム

作業も大詰めに

Bチームは、移住者が地域に馴染むプロセスを見える化してサポートする「スタンプラリー」を提案。サービス名やロゴまでを作り込んでプレゼンに備えます。

プレゼン資料

資料を貼りだして練習!

両チームとも、用意したプレゼン資料を全部プリントアウトして貼り出して、話の流れや不足する部分などを確認!
講師の影山さんからは、資料やプレゼンの仕方、時間のコントロールなどについて細かいアドバイスが入り、時間ぎりぎりまでブラッシュアップを行いました。

いよいよ発表!ユニークなアイデアが続出

発表前

発表が始まります

■14:15~17:05 発表&講評

会場のお試しオフィスに参加者が揃いました。全員が顔を合わせるのは、1日目のオリエンテーション以来です。この日は千葉工業大学の学生や、地元の高校生も見学に来ていました。講評者に(株)良品計画事業担当部長の生明(あざみ)弘好さん、南房総市地域おこし協力隊員の瀬戸川賢二さん、NPO法人南房総リパブリックの馬場未織さんをお招きし、発表スタートです。

発表は小商い、メディア、社会起業の順に行われました。

トップバッターは小商いコースの川鍋さん。二地域居住の先輩や、関心がある人とつながりたい!生の声を聞きたい、という思いから、週末開催の「里山バー」を考えました。バーといっても空間を提供するに留め、お酒のおつまみはみんなで用意します。馬場さんからは「時間をDIYする、いいアイディア」とコメントがありました。

川鍋さん

「緊張します」と話しながらも、堂々とトップバッターを務めた川鍋さん

二人目は同コースの宮寺さんです。都内で長年飲食店をしていた経験を活かし、南房総でとんかつ屋さんを開きたいと発表しました。食材には、脂が美味しい千葉県産の「健康美容豚」を使います。

健康美容豚

ゆる~い豚のイラストに和む会場

三人目は、南房総でコーヒー豆の焙煎所を開きたいという元沢さん。コーヒーを扱う商社で約20年勤務し、南房総に移住したといいます。焙煎した豆は、パッケージの簡素化や送料負担の軽減をして提供したいと提案しました。生明さんの「ローカルビジネスでは地域性が必須。この地域だからこそ、という必然性が感じられない」という厳しい指摘に、「“南房総だから”より、“南房総でもできる”という入口があってもいいのでは」と説明していました。

続いてメディアコースです。
一つ目のチームは、保護猫が暮らすシェルターと、宿泊施設をドッキングした「保護猫ゲストハウス」を発表しました。場そのものが、人や情報を媒介する立派なメディアになる、という発想が新鮮でした。

保護猫チーム

軽妙な語り口でオーディエンスを惹きつける「保護猫ゲストハウス」チーム

もう一つのチームは、「地域に馴染めるだろうか?」と不安を抱く移住者のためのスタンプラリーを発案。地域の人のお願いに応えたり、イベントに参加したりするとスタンプがたまり、自然とつながりも育まれるというアイデアです。

スタンプラリーチーム

チームを代表して発表

講評では、瀬戸川さんから「移住者が頑張るだけでなく、市も歩み寄ることを考えるべき」という意見や、馬場さんから「設定によって盛り上がりそう!温度差が生まれないように、地域の人が移住者にどうアプローチするかも考えてみては」とアドバイスを頂きました。

瀬戸川さん

講評する瀬戸川さん(右)

最後は社会起業コース。
農業チームは、牛をアイドル化して有料のファンクラブをつくることで、南房総の酪農家や酪農を始めたい移住希望者を支援するサービスを提案しました。ターゲットは中年男性で、その名も「モ~娘のChi²(チチ)」。リアルタイムで成長の過程を届けたり、モ~娘総選挙を開催したりと様々な仕掛けで出資を促進させるねらいです。酪農をエンターテイメント化した斬新な発想と大胆なネーミングに、会場は爆笑の渦に包まれました。

モ~娘チーム

「牛のアイドル化」というアイデアで会場を沸かせた

観光チームは、旅行プランの提案やさまざまなイベントを企画する「ベース」を町村ごとに設け、「循環型の旅」を目指す拠点にしたいと発表してくれました。生明さんから「観光課題に真正面から向き合うようなアプローチでもいいかもしれない」と講評がありました。

社会起業観光チーム

講評に熱心に耳を傾ける観光チーム

最後は獣害チームのアプリサービス「ワナ」の発表です。イノシシの被害が急増している南房総市。さらなる拡大を防ぐため、狩猟に興味のある都市部の住民をターゲットに、アプリ内で罠を仕掛けられるサービスを考えました。罠の点検は地元の猟友会に協力してもらうなど、地域とユーザーが連携していく仕組みになっていました。

レストラン「Bar del Mar」で懇親会

にぎわう会場

■17:05~19:30 懇親会

シラハマ校舎内にあるレストラン「Bar del Mal」で、輪になって乾杯です!
チームの仲間と苦労をねぎらい合ったり、コースを超えて盛り上がったりと、ここでもたくさんの交流が生まれました。

2日間でローカルビジネスを学び、プランを考え、コースによってはアクションも起こした「南房総2拠点大学」。具体的なプランを練る時の参加者の皆さんの楽しそうな表情が印象的でした。南房総の資源や課題を活用した内容で、実現できそうなプランも多くありました。今後の動きも楽しみだと思える2日間でした!

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ココロココ編集部

ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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