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2018年2月8日 岩手移住計画

「ポジティブな過疎地」を創る!陸前高田とヨソモノをつなぐ『高田暮舎』の挑戦

東日本大震災からまもなく7年――。「陸前高田」と聞くと、「奇跡の一本松」を思い浮かべる人も多いかもしれません。津波でもっとも大きな被害を受けた地域のひとつである陸前高田は、故郷の復興のために戻ってきた人たち、震災をきっかけに地域とつながった若者たち、そして地域を愛する地元の人たち、みんなが一体となって新しい陸前高田を創っていこうという覚悟と活気にあふれています。

この動きを加速させるため、市は新たに4つの分野で活動する地域おこし協力隊(以下、協力隊)を募集します。今回は「移住コーディネーター」として着任する協力隊といっしょに陸前高田への移住定住の促進に取り組むNPO法人「高田暮舎(たかたくらししゃ)」と移住コーディネーターの仕事についてご紹介します。

高田のキーパーソンが結集。移住促進めざし「高田暮舎」を発足

高田暮舎は2017年にUターン者2人、Iターン者3人、生粋の陸前高田市民2人の男女7人が発起人となり設立した新しいNPO法人です。大震災以降、たくさんのボランティアを受け入れてきた陸前高田市は、ボランティアとして訪れた学生や若手社会人がリピーターとなりさらには長期滞在したり移住に踏み切ったりするケースも少なくありませんでした。

ボランティア

▲地域の人たちと交流するボランティアの若者たち

一方で、復興が最優先の陸前高田市ではこれまでは住宅事情などの問題から積極的に移住促進を掲げることが難しいという現実があり、人口は2万人を割り込んでいます。そこで、震災後の高田の「キーパーソン」として復興や地域づくりを担ってきた7人が移住定住促進に取り組む団体の設立に動きました。それが「高田暮舎」です。
ITを活用した若者の人材育成や農家の支援に取り組む「SAVE TAKATA」や津波の到達地点にサクラを植樹し震災を後世に伝える「桜ライン311」など、それぞれが陸前高田の顔として活躍中の面々が揃って新団体をつくる、というのも陸前高田ならではです。

移住定住促進のためのポータルサイト「高田暮らし」

高田暮舎発起人の一人で、自身もヨソモノの移住者、移住後に最年少市議会議員となった三井俊介さんは「暮舎がめざすのは、人を活かす『ポジティブな過疎地』です。人口減少を憂うのではなく、地元の人も移住者も一緒に高田の暮らしを楽しめるよう、移住希望者や移住者のサポートをしていきます」。
三井さんは大学在学中の2011年に復興支援団体「SET」を設立、その後にNPO法人化し現在も市内広田町でたくさんの大学生の受入を行っており、若い移住者コミュニティの中心的な存在です。

移住者三井さん

▲移住後、結婚し二児の父親でもある三井さん

市の事業パートナーとして移住定住促進事業を受託した高田暮舎はワンストップで移住者に対応するために
・陸前高田への移住定住のためのポータルサイト「高田暮らし」による情報発信
・空き家バンクの運用
・移住者同士のコミュニティの構築
――といった事業を進めているところです。

「移住コーディネーター」として活動する協力隊も高田暮舎の一員として、まだスタートしたばかりの事業を軌道に乗せていく役割が期待されています。市の担当である企画政策課の古館俊一さんは「協力隊には移住者に近い『ヨソモノ』の視点で、高田の人や暮らしの魅力を発信してほしい」と期待を寄せます。古館さん自身も震災後に、妻の故郷・陸前高田にIターン。着任する協力隊には心強い先輩移住者でもあります。

「移住コーディネーター」の若き先輩?!空き家バンク創設に奔走

それぞれが多忙を極める高田暮舎の設立メンバーたち。現在の高田暮舎の活動は……?「移住コーディネーター」は何をするの?と一瞬、不安がよぎりますが、心配いりません。じつは設立初期から高田暮舎の実働部隊として奔走してきた先輩がいるのです。それが佐々木裕郷(ゆうと)さんです。

移住者の先輩佐々木さん

▲陸前高田での仕事に充実感を感じているという佐々木さん

佐々木さんは大学を休学し陸前高田市の復興支援員として、2017年7月から高田暮舎で「空き家バンク」の創設に奮闘しています。空き家バンクは、所有者の同意を得て賃貸や売買の対象になる空き家の情報を自治体が登録し、希望者に情報提供する制度です。市としても前例のない空き家バンク事業。市が集めた空き家情報をもとに佐々木さんが所有者のもとを尋ね、現在の室内の状況や意向を調査。

「最初は(空き家バンクに)登録してもらえるかな、と思っても、次にお会いしてみるとなかなか同意してもらえなかったり、制度に協力してもらう不動産業者さんとの調整も苦労の連続で、折れそうになることばかりでした(笑)でも毎日、住民の方と少しでも話が進んだり、関係者と意見が一致したり、ほんの少しの進歩でも充実感を感じられる仕事です」と振り返る。

「折れそう」になった時、高田暮舎の設立メンバーたちに精神的に支えられたそう。「全然タイプの違う人たちばかりで、しかもみんな忙しいので揃う時間は短いのですが、みなさんピンチを笑い飛ばせるタフな人たちばかりで、一緒にいるだけで与えられるものがたくさんあるんです」と目を輝かせる。

佐々木さん

▲真剣な表情で話しに聴き入る佐々木さん

「働き方を自分でデザインする」高田らしい仕事と暮らし

陸前高田の移住ポータルサイト「高田暮らし」は2018年2月公開予定。佐々木さんが奔走した空き家バンクの情報のほか、着任する協力隊はすでに陸前高田市で暮らしている移住者へのインタビュー記事や市内の企業の情報の掲載など、高田で働き暮らすために必要な情報の発信が期待されています。

個性あふれる高田のキーパーソンたちのもと、実働部隊として奔走してきた佐々木さんは「自分で働き方をデザインできるのも暮舎の魅力」と語ります。「空き家バンクの創設」という大きなミッションのもと、どうやって進めるか、誰に会うかといった具体的な日々の仕事は自分で判断することの連続だったという佐々木さん。「打合せと打合せのあいまに海を見て気分転換をしたり、山の中に停めた車でパソコン仕事をしたり。自分で時間をつくって仕事をするという姿勢も身につきました。魚も捌けるようになるなどサバイバル力も着きました(笑)」。

シェアハウス

▲プライベートでは住まいのシェアハウスの床貼りも

最後に「移住コーディネーター」を待つ三井さんと古館さんからメッセージをもらいました。

三井さんは「自分の頭で考え動ける人にとっては最高にやりがいのある仕事と環境です。貪欲に成長し続けたい人、ガッツのある人を待っています!」とアツく呼びかけます。古館さんは「陸前高田はあたたかく優しい人の多いまちです。失敗を恐れず一緒に挑戦しましょう。なんでも相談に乗ります」と語ってくれました。

先輩移住者

▲「移住コーディネーター」着任を待つ3人。古館さん、佐々木さん、三井さん(左から)

取材先

NPO法人「高田暮舎」

高田暮舎Facebookページ

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岩手移住計画

岩手移住計画岩手移住計画は、岩手にUターン・Iターンした人たちの暮らしをもっと楽しくするお手伝いをし、定住につなげていくために活動している任意団体です。県内各地で、「岩手移住(IJU)者交流会」と題したイベントを開催しているほか、岩手県などが主催するUIターンイベントにメンバーが参加し、移住希望者の相談にも対応しています。首都圏と岩手をつなぐ活動にも力を入れています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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