美しい“海”だけでなく、“山”も魅力の高知県
大豊町、本山町、土佐町、大川村で構成される嶺北地域は、高知県の中央北部、四国全体でみるとちょうど中央に位置する山間地です。吉野川の源流域にあたり、ラフティングなど自然を生かしたアクティビティも盛んな地域です。また、高知駅からも車で30分強と県中心部からもアクセスのよいエリアでもあります。
また、2019年7月から12月まで「土佐れいほく博」が開催されており、月ごとにアウトドア・食といったテーマで様々なイベントが行われています。
JR高知駅、高知龍馬空港に集まった参加者を乗せたバスは最初の目的地、大豊町の「山の畑の猪野農園」へ向かいます。今回は東京、大阪のほか埼玉や広島からも参加されていました。
Uターンで手がけるトマトの有機栽培
一行はトマトの有機栽培を行う「山の畑の猪野農園」に到着。圃場を見学しながら、農園を経営する猪野さんのお話を伺いました。大豊町出身の猪野さん、ご実家は農業を営んでいたそうですが、進学を機に地元を離れ、大阪で就職、宮崎県出身の奥様と結婚し暮らしていました。お子さんが産まれてしばらくした時、豊かな自然に囲まれた大豊町で子どもを育てたいという気持ちが出てきたといいます。
「妻にとっては、大豊町での暮らしは、イメージできないものだったかもしれませんが、私の考えに理解をしてくれただけでなく、収入の安定を考えて役場で働くと言ってくれました。妻には本当に感謝しています」
そんな猪野さん、まだ大阪で暮らしていた時、帰省時に農業を行う父親と話をする間に、“農業も面白いのではないか”と考えるように。Uターンが決まった後は、農業学校を経て、嶺北内の研修施設で有機農法を学び、6年ほど前から有機栽培でトマトを育てはじめました。高知県は新規就農者への支援が充実しており、地域に合った作物の提案だけでなく、相談・研修・就農のサポートもあるそうです。
猪野さんのお話では、生まれ育った大豊町での新しい生活に満足している一方で、収入面では、まだまだ目標には到達していないというのが現状とのこと。しかし収入を1本の柱ではなく、2本、3本で支えるという考えが大切で、それによって安定性は高まります。猪野さんの場合、知り合いの紹介で地元産のそば粉で打った「立川そば」にも携わることになり、現在では総収入の1/3を占めるまでになっているそうです。
“大豊町での暮らし”についても「山に囲まれているこの景色からでは、意外と思われるかもしれませんが、街にも県外にもアクセスしやすい環境です。自然に恵まれ、いつでも釣りができる川やキャンプができる山もたくさんありますよ」と猪野さん。地元であると同時に、一度は離れたことで大豊町を客観的な視点でも語ってくださった猪野さんの話に、参加者も聞き入っていました。
山の恵みと地域の風土を味わう
「山の畑の猪野農園」を後にした一行は、本山町の「本山さくら市」に到着し昼食をとることに。この日の昼食は山の幸がぎっしり詰まったお弁当です。今でこそ新鮮な魚介も手に入る嶺北地域ですが、道路などが整備される前は、なかなか海の幸を食べることができませんでした。そうした風土のなかで生まれた郷土料理が山のものを海のものに見立てた「田舎寿司」です。参加者はこうした嶺北地域の地域文化にも思いをはせながら、食事やショッピングを楽しんでいました。
歴史ある蔵元「土佐酒造」の見学
続いて向かったのは高知県を代表する銘酒「桂月」で知られる蔵元「土佐酒造」。土佐町にある1877(明治10)年創業の老舗です。近年は、世界的なワイン品評会の日本酒部門に出品して高い評価を受けるなど、世界にも知られる存在となっています。スパークリング日本酒の「匠 (John)」や、柚子風味が特徴の「YUZU SAKE」など新感覚の日本酒が人気です。
ここでも酒蔵を見学しながらその作り方や歴史を学びます。また、製造されているお酒の試飲、ショッピングなどを楽しみました。お酒もその地域の風土を如実に表すものの一つ。参加者も説明を聞きながら五感で嶺北地域を感じていました。
嶺北地域との接点「れいほく田舎暮らしネットワーク」
次に訪れたのは「土佐酒造」に程近い古民家宿「地蔵庵」。この素敵な古民家を会場に「先輩移住者との4町村合同座談会」が行われました。各自治体の移住支援を担当する職員さんと、先輩移住者のみなさんが登場しました。
まずはNPO法人「れいほく田舎暮らしネットワーク」のメンバーの一人、鳥山さんから活動内容の紹介がありました。 「れいほく田舎暮らしネットワーク」は移住支援を目的にボランティア団体として2007(平成19)年に発足。 NPOとなった現在は、空き家・農耕地の情報提供や、移住に関する問い合わせの対応、また移住後のサポートをしています。 お話しいただいた鳥山さんは、神奈川県西部の出身。嶺北地域と縁があったわけではありませんが、山に囲まれた環境で暮らしたいとの思いから、家族で土佐町へ移住することを決意しました。現在の住まいは、人づての紹介で決めることができたそうですが、地縁ない移住者がこのようなケースで家を決めることは稀。そもそも嶺北地域には不動産会社が少ないため、移住希望者にとって家さがしは大きなハードルになります。
こうした現状を踏まえ、空き家の掘り起こしや情報提供を行う「れいほく田舎暮らしネットワーク」。住まい探し以外にも移住者・移住希望者と地域とをつなげる役割を担っており、その一つとして年に数回「お山の手づくり市」を開催しています。 ものづくりが好きな移住者がいたことから始まったイベントで、最近では子どもたちが参加できる「こどもマルシェ」も実施。友だちづくりだけでなく、子どもたちに“自活”の意識を持ってもらう狙いもあるそう。
「移住がゴールではなくそこからがスタート。田舎で生きていくということは、人と人、人と地域との結びつきが何よりも大切です。助け合いながら生きてきた先人に学ぶべきことはたくさんあって、そうした生きる知恵や、人生を楽しむためのコツを次の世代につなげていけたらと思います」。
参加した先輩移住者からも、「最初はわからないことだらけだったが、知り合いが増えるにつれて仕事も増えていった」「インターネット関連の仕事なので場所にしばられないため、大豊町の環境に一目惚れで移住を決めた」など、移住したきっかけや仕事のことなど、リアルな話をうかがうことができ、充実した座談会となりました。
最後に移住検討者へのアドバイスという話題では、
「都会のよさも田舎のよさもあります。どちらがいいというのではなく、どちらもいいのです。ですから互いを比較するのではなく、“そういうものだ”と考えること。そして優先順位をつけ、譲れるものと譲れないものを整理することが大切だと思います」と鳥山さん。続けて、「生活をするなかで、色々なことに迷い、戸惑うことがあるかもしれません。そのようなとき、“自分で選んでここにいる”と原点に立ち返ると気持ちが楽になることがあります。月日を重ねていくと、考えが変わっていくのは自然なこと。ですから未来を決めつけ、現在を縛られたものにするのではなく、“考えは変わってもいい”という姿勢が大切ではないかなと思います」と話していました。
希少な「土佐あかうし」をいただくBBQ交流会
「先輩移住者との4町村合同座談会」を終えた後は「BBQ交流会」。メインとして登場した「土佐あかうし」は、年間出荷量が和牛生産量の0.1パーセントほどで、県内の方でも食べる機会は少ないというレアな食材。炭火で食材を焼きながら、高知県が好きな理由、県内のおすすめスポット、将来についてなど、様々な話で盛り上がった時間となりました。
環境を活かしたアクティビティ、誰でも楽しめるカヤック体験
2日目は1日かけてカヤック体験を行います。梅雨時ということもあり、天候が心配されていましたが、数日前まで大雨が降っていたとは思えないほどの快晴となりました。 この日は、アウトドア・生活文化・食をテーマに、2019年7月7日から12月25日まで開催中の「土佐れいほく博」初日。さらに、今回お世話になるアウトドア拠点「モンベル アウトドアヴィレッジ本山」がオープンする日でもあります。この晴れやかな日に、カヤック体験に臨みます。
ほぼ全員が初体験というカヤックでしたが、皆さん苦労することもなく、全員が川面をすいすいと滑っています。穏やかできれいな吉野川の流れは、眺めているだけでも心が落ち着きます。体験後の参加者は、全員清々しい表情に。心地よい疲れを感じながら、自然と遊ぶことの爽快感や四国の雄大な自然を全身で感じているようでした。
カヤック体験を終えいよいよこのツアー最後のスポット、本山町の「cafeレストしゃくなげ」で昼食です。ここでは、障がいのある方々が共同生活を送る「しゃくなげ荘」の農園で有機栽培された農産物をふんだんに使った美味しい食事を提供しています。
参加者は、ここでも嶺北地域の美味しい恵みを感じた後、帰路につきました。
大豊町、本山町、土佐町という山間部を巡る今回のツアー、いかがだったでしょうか。四国のちょうど中央部に位置する嶺北地域の魅力をアクティビティやグルメで体感できることはもちろん、仕事や住まいといった移住先探しのハードルに対しても、サポート体制が整っていることを、参加者はしっかり感じていたように思います。
地域ごとの特性を知るには、まず現地に行って確かめてみることが大事だということを改めて感じるツアーでした。
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