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2020年9月2日 ココロココ編集部

飯舘村に新たな文化・クリエイティブ拠点をつくる!廃校を活用した「Bound for IITATE」プロジェクトとは?

東日本大震災と福島第一原子力発電所事故により、全村避難となった福島県飯舘村。2017年3月31日には避難指示が解除(一部継続)され、少しずつですが現住人口が回復しつつあります。2020年8月には村外からの移住者も100人を超え、村の至るところで新たな取り組みも生まれつつあります。
そんな飯舘村で始まろうとしている新しい動きのひとつが、地域おこし協力隊による廃校を活用した「Bound for IITATE」プロジェクト。いったいどんな取り組みなのか? 実際に現地に向かい、その様子を取材してきました。

舞台は飯舘村立草野小学校。飯舘村の地域おこし協力隊第一号が企画

「Bound for IITATE」プロジェクトの舞台は、2020年3月に閉校し、現在は廃校となっている飯舘村立草野小学校。緑あふれる豊かな自然に囲まれ、穏やかに流れる時間を身体いっぱいに感じられるこの小学校で、アーティストやクリエイターの活動拠点、村内外の人々の交流拠点を創り出していこうというプロジェクトがスタートしています。

飯舘村立草野小学校入口

「Bound for IITATE」プロジェクトを企画し、メインメンバーとして運営に携わっているのは、飯舘村の地域おこし協力隊第一号である松本奈々さんです。

福島市出身の松本さんは、大学への進学をきっかけに上京、大学卒業後も都内のIT企業に就職し、SEとして生活を送っていました。しかし、仕事に慣れ、これからの人生を考えるようなった時、大学時代にボランティアを通じて出会った飯舘村の人たちとの記憶が蘇って来たといいます。そんなタイミングで、知人を通じて偶然知った隊員募集の案内がきっかけとなり、2019年4月に飯舘村の地域おこし協力隊に着任しました。

松本さんについてはこちらの記事でも紹介しています。
https://cocolococo.jp/29290

松本さんが今回の「Bound for IITATE」プロジェクトを企画したきっかけは何だったのでしょうか?

協力隊の松本さん

「もともと、アートを通じた地域活性化や地域の人とともに作るアートプロジェクトに関心があり、チャンスがあればそういった企画のプロデュースに携わりたいと思っていました。昨年、飯舘村に移住を決意し、過疎化や空き物件の利活用に関する課題を多く抱えていることを知り、自分自身の興味も踏まえながら何かできないかと考えたどり着いたのがこのプロジェクトです。」

飯舘村の地域おこし協力隊は、「○○を成し遂げなければならない」「△△で働かなければならない」といった明確なミッションが用意されているわけではなく、隊員がやりたいこと・興味があることを飯舘村の資源をうまく活用しながら、自ら実現していくスタイルの活動である点が特徴。松本さんは、そういった環境で隊員として過ごすうちに、今回のプロジェクトを立ち上げようと考え、村に提案したところ、草野小学校の活用を薦められました。

プロジェクトをPRするポスターも制作

「場所を選ばず仕事ができるクリエイティブ系の個人や企業が、飯舘村のような自然豊かな農村地域に集まることで、最近注目が増えている「多拠点生活」のモデルケースになれるのではないかと思ったのも理由の一つです。将来的にはアートに限らず、多様な分野・バックグラウンドの人たちが集まって、地元のみなさんも含めた交流やコラボレーションが生まれる場にできればと思っています。」

今後は校舎の2階にある大小様々な教室を使って、クリエイター向けの貸アトリエ/オフィス、コワーキングスペースなどを作る予定。利用者が村内に居住できるよう、学校の近くにある一軒家もシェアレジデンスに改装しているそうです。

草野小学校2階の活用イメージ

空き教室の様子。校舎は坂の上にあり、窓からの見晴らしも心地よいです。

他の空き教室の様子。アトリエやオフィスとして利用できそう。

個性的な飯舘村の協力隊メンバー。互いに連携しながらプロジェクトを進行!

飯舘村には、現在松本さんの他に2名の地域おこし協力隊がいます。草野小学校隣の旧草野幼稚園園舎で「刃物の館やすらぎ工房」とギャラリーを営む二瓶さんとキャンドル作家として活動する大槻さんです。松本さんはこのおふたりとも協力しながら、「Bound for IITATE」プロジェクトを進めていこうとしています。

二瓶さんは、活動拠点としている刃物工房のギャラリーや前庭を使って、モノづくりワークショップやマルシェイベントを企画し、村外から足を運んでくれる人を増やしながら、村の魅力を発信する活動をしています。 これまでに工房のギャラリー内で何度か開催されたキャンドル制作やフラワーアレンジメントのワークショップはどれも満席の人気ぶりだそうです。

二瓶さん(写真左)が実施したワークショップの様子。

大槻さんは、キャンドル作家として村にアトリエを構える予定で、飯舘村産の花を取り入れたボタニカルキャンドル制作やワークショップを通じて、飯舘村をより多くの人に知ってもらう活動を行っています。

大槻さん。キャンドル制作で注目を集めています。

現地に訪れた8月15日には、大槻さんが担当した、村に寄贈されたビール缶やお酒ラベル等のコレクション展示「モノは捕らえよう展」が開催されていました(8月30日終了)。

旧図書室を利用した、雑誌やビール缶のコレクション展示

花卉や果物、グルメなど飯舘村の魅力を紹介する展示も。

また、小学校に隣接する旧草野幼稚園では二瓶さん主催のイベント「山の向こうから」も開催されており、織物や飲食など福島県内の様々な出店者が集まって賑わいをみせていました。

「山の向こうから」。飲食やアクセサリーの販売を実施。

今では人を招いてイベントができるようになった小学校の空間ですが、「Bound for IITATE」の話が持ち上がった当初は、校舎の片付け・清掃から地道に手を付けなければならない状況でした。地域の人たちに協力してもらいながら、なんとか展示ができるまでこぎつけたそうです。

校舎の片付けの様子。

「今後は村内外から参加者を集めて、ベッドやテーブルなどの家具製作、壁の塗装といったDIYイベントを定期的に開催しながら校舎の設備も整えていきたいです。また、クリエイティブ拠点として、アーティストやクリエイターの入居を目指すのはもちろんですが、仕組みの整理や日常的な業務をサポートしてくれる仲間も増やせればと思います。」 と松本さんは語っていました。

プロジェクトを通して、廃校にどのような人々が集い、どのように交流していくのか、どんなモノ・コトが生まれるのか。これから飯舘村で生まれるストーリーが楽しみになる取材でした。

プロジェクトに協力してくれる仲間を募集しています!

「Bound for IITATE」は、まだまだ走り出したばかり! 松本さんをはじめとする、村の協力隊員たちと一緒に飯舘村を盛り上げてくれる仲間を募集しています。 今回募集するのは以下の①~④のメンバーです。

①プロジェクトをつくりあげるクリエイティブマネージャー(地域おこし協力隊)
②飯舘村に住んで作品づくりをしたいアーティストやクリエイター(地域おこし協力隊)
③飯舘村に滞在して作品づくりを行いたいアーティスト・クリエイター(滞在プラン)
④プロジェクトを応援してくれるサポートメンバー(ボランティア)

募集の詳細についてはこちらをチェック!
https://cocolococo.jp/works_recruit/30535

いきなり応募ではハードルが高い方は、まずはお問い合わせからでも。お気軽にご連絡ください。

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ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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