自分の目で2拠点ワークのヒントを見つけたい
千葉県の房総半島の最南端に位置する南房総市に、2拠点ワークに関心のある皆さんが集まった。都心から車でわずか90分でアクセスできる環境のよさを実際に体感して頂いたことだろう。
午前10:00、「とみうら元気倶楽部」からスタート。まずは南房総市商工課の真田さんが南房総市の特徴や強み、課題について紹介。「ぜひ南房総市の良さを肌で感じてください」と挨拶をした。
そして、参加者皆さんに自己紹介と今回のフィールドワークへの参加動機を教えて頂いた。今回の参加者の皆さんは、南房総に1度は来たことがあるという。参加動機としては、2拠点ワークに関心があり、自分の目で見て感じることで、何か新しいヒントやインスピレーションが得られることを期待されている方がやはり多かった。中には、すでに2拠点ワークを実践している方もおり、参加者の意欲の高さがうかがえた。
「シラハマアパートメント」と「旧長尾小学校」を訪問
いよいよフィールドワークへ出発。バスに乗り込み、「シラハマアパートメント」を目指す。 南房総市白浜町に建つ「シラハマアパートメント」は、廃墟ビルをセルフリノベーションし、1階がカフェとガラス工房、2階がゲストルームと学習塾、3・4階がシェアハウスになっている。
バスに乗り30分ほどで「シラハマアパートメント」に到着。運営・管理をされている多田朋和さんに、「シラハマアパートメント」を案内していただいた。
まだまだ改修中だと言われている屋上にも登らせていただいた。目の前に広がる絶景に参加者一同から感嘆の声があがった。天気がよいと伊豆七島が見えるとのこと。あいにく当日の空は厚い雲に覆われてしまっており、残念ながら見えなかったが、それでも開放感のある屋上はとても魅力的だった。
その後、多田さんと共に「シラハマアパートメント」からバスで5分ほどのところにある「旧長尾小学校」に移動。現在は廃校になっている小学校だ。
多田さんは、この小学校を良品計画や千葉県館山市のデザイン会社と共にリノベーションする予定だ。 小学校の校舎は当時のまま残っており、教室はシェアオフィスやカフェに、コンピュータ室は簡易宿泊スペースに、理科室はシャワー室に変わる予定だと言う。校庭には良品計画がデザインした小屋と菜園が多数建つ。
「これからリノベーションを進めていくが、完成した部屋を入居者の方に渡すわけではなく、入居者みんなで作っていければ」と多田さんは語る。 今後の活動内容にも注目していきたい。
「道の駅ちくら 潮風王国」で南房総の食を堪能
小学校を後にすると、時間はちょうどお昼時。「道の駅ちくら 潮風王国」で南房総の食を堪能した。 「道の駅ちくら 潮風王国」には地元で獲れた新鮮な魚もずらりと並ぶ。多くの観光客や地元の人で賑わっていた。
南房総市の特徴として道の駅が8つもあることが挙げられる。どの駅も魅力的でぜひ観光で訪れた際は巡ってみてほしい。
シェア里山「ヤマナハウス」プロジェクトの古民家へ
昼食後、続いて「シェア里山」プロジェクトの現場を見学すべく、永森昌志さんが改修中の古民家へ向かう。永森さんは現在東京と南房総市で2拠点ワークを実践している。東京ではウェブディレクションの仕事やレンタルオフィス「HAPON」の運営をしているが、最近は生活の比重を南房総市に移し、東京と南房総市を行ったり来たりしている。最近は仲間と南房総市の古民家を改修し、週末に人が集まれたり、ワークショップ等が行えたりする里山を提供しようと、シェア里山「ヤマナハウス」プロジェクトを進めている。
今回は改修中の古民家を見学させていただいた。昨年春頃から家の中の掃除を始め、やっと床を少し張り替えたとのこと。この新しい床は、木目の向きによって南向きがわかるようにするなど、こだわりもあった。
他にも外にあるお風呂や、床下の立派な梁なども見せていただいた。古民家の歴史を感じられるものが多数残っている。
「まだまだすることは山ほどある」と永森さんは言う。「現在はまだ宿泊はできない状態なので、まずは宿泊できるようにしていきたい。今年は、隣にある畑にも手を加えていきたい」とのこと。
古民家暮らしに憧れている方も多いなか、実際に改修中の古民家を見ることで、楽しさや苦労も感じることができたのではないだろうか。
「毎週末がドラマチック!」馬場さんのご自宅訪問
そして、いよいよ最後のフィールドワーク先として、馬場未織さんのご自宅へ向かう。馬場さんは、2007年から東京と南房総市での2拠点ワークを送っており、自宅のフィールドと周辺地域を舞台に里山学校等を行うNPO法人「南房総リパブリック」の理事長でもある。
実は当日、馬場さんはお子さんとご一緒に、朝からフィールドワークに同行されていた。バスでの移動中には、2拠点ワークをするにあたり土地をどのように探したか、をご自身の経験を踏まえ具体的に話してくださった。南房総市の土地を購入するまでに、3年ほどかかったとのこと。苦労した点もうかがうことができ、より具体的に2拠点ワークをイメージできた。
馬場さんのご自宅近くまでたどり着き、そこからは徒歩で向かう。馬場さんが購入した土地は山林も含め8700坪あるそうで、生活されている古民家まで少し山を登る。
ご自宅である古民家は昔の状態のままでも使えるものは使うようにしていると言う。 「家のしつらえは最低限。東京と同じにしたらおもしろくないじゃないですか」と馬場さん。
馬場さんは2拠点ワークを始めて約10年。「毎週末がドラマチック。ここがない生活は想像ができない」と話された時の笑顔が印象的だった。
また、暮らしていく中で何かお返しをしたいと考えるようにもなったそうだ。 「ただ暮らすだけということに毒素が溜まってきたんです。地域の方と親しくなるうちに、何もお返しができていないことに気付いた。物ではない何かでお返しができないかと考え、子どもたちを集めて里山学校を開催したりしているんです。そこに近所のおじいちゃんやおばあちゃんなども参加してもらい、中心となってもらうことで楽しさをおかえしできれば」と語る馬場さん。
2拠点ワークをしていくにあたり、不安点としてあがるのが地元の人とのつながり。「地域へのお返し」というのは大事な視点かもしれない。
馬場さんのご自宅を後にして、「とみうら元気倶楽部」に戻ってきた皆さん。今回、現場を自分の目で見たことで、「2拠点ワークをするにあたり、自分だったらどんな活動をしたいのかもっと考えてみようと思った」「南房総のファンになった。今後も関わっていく方法を見つけたい」など、それぞれ感じることがあったようだ。
今後の2拠点ワークを考えるにあたってのヒントを得られた、貴重なフィールドワーク。このような機会を通じて移住し、2拠点ワークを始める人が増えることを期待する。