しごとづくり講座-仕事づくりレーベル「ナリワイ」代表 伊藤洋志さん
まずは伊藤さんのお話から、「地域での仕事づくり」のヒントを学びます。
現代社会では、人生の中でどうしても「仕事」に重きを置きがちですが、そんな世の中でも「暮らしをベースに仕事を行う」ことを大切にされている伊藤さん。今回は、ご自身のしごとの具体例から、伊藤さん流「自営業のススメ」や自分なりの「ナリワイ」を見つける方法などを教えていただきました。
伊藤さんのお仕事は、大小さまざま。「非常勤農家(和歌山、山形)」、「木造校舎ウェディング」、実践を通してパン屋開業のノウハウを学ぶ「土窯パン屋を田舎で開くワークショップ」や、「モンゴル武者修行ツアー(12年目!)」、「古座川ハナアミ」などユニークなお仕事ばかり!
「3ヶ月で日替わりオーナーゲストハウス」は、空き家を月1,000円の家賃で借りることで実現しており、コスト削減と住の自給度アップも目指した「全国床張り協会」などを行っています。
「農作業着メーカーSAGYO」は、「風景をつくる作業服」として、丈夫かつ着る人自身も静かにボルテージがあがるような作業着をプロデュースしています。全国でも降雨量の多い三重県尾鷲市の「オワセ合羽」を製造する町工場(和歌山)ともコラボされているとか…?高い技術力や素敵な仕事をされている町工場や地元企業を見つけてアプローチするのも、自分流の「ナリワイ」を見つけることの面白さだとおっしゃっていました。
「小さい元手で、体ひとつで出来ることはたくさんある。」
仕事の規模ばかり追うのではなく、小さい仕事にも応用力を見出すことが大事。もちろんこの事業で生計を立てるには、何でも自分でやったり、複数の仕事を掛け持ちしたり、コスト削減のために頭を悩ませたり、商品やサービスの質向上に向けて悩んだりと大変な部分も多いようです。しかし、自分の暮らしベースで物事を進めることで、人脈ができたり、アイデアが広がりやすかったり、派生して面白い仕事にもつながるのだと言います。
埋もれたものを探すと面白いものがたくさん見つかって、特技・足りないものを補完しあうことでオリジナルの「ナリワイ」ができる。ちょっとしたことに目を向ければ、実は世の中には「ナリワイになりそうな仕事がたくさんある」!少し視点を変えるだけで、可能性は無限大ということですね。
石鏡町について―鳥羽市役所 重見さん
続いて、本講座の受け入れ地域である「鳥羽市石鏡町」について、鳥羽市役所の重見さんからご紹介いただきました。
鳥羽市は、紀伊半島の東端に位置し、日本一海女さんの多い町として知られています。その中でも石鏡町は、かつて陸の孤島といわれた漁村でしたが、1973年の「パールロード」開通により、市街地まで陸路で行き来することができるようになりました。
現在も海女として女性が活躍するなど、貴重な文化や風習が色濃く残っています。一方で、町の人口減少や高齢化により、海女を受け継ぐ女性は減り、後継者不足が課題にもなってきています。そこで石鏡町では、海女文化を学び、海女が水揚げした海産物の高付加価値化やブランディングに取り組んでくれる若者を求めています。
移住者が見た石鏡町のリアル―鳥羽市地域おこし協力隊 上田茉利子さん
続いては、「鳥羽市地域おこし協力隊」として2018年7月から鳥羽市へ移住した上田さんのお話。
出身は千葉県船橋市と、都会から移住した上田さんから見たこのまちの魅力を主に3つ語っていただきました。
1つ目は、陸の孤島特有の「貴重な文化や風習が色濃く残っている」こと。1年の家内安全を願う「天王祭」や、「施餓鬼(せがき)」「弓引き神事」「磯のおり合わせ」「ヒジキ狩り」など、陸の孤島であったからこその、この土地特有の伝統行事が受け継がれており、これらに対するまちの人々の熱量も高いそうです。
2つ目は、やはり「海女がいる」ということ。町のおばあちゃんはほとんど海女さんだという石鏡町ですが、年々高齢化・人口減少・担い手不足により、その数は減少しています。そこで上田さんは、ご自身が広告代理店勤務だったことを活かして、「海女ゾネス」というコピーで商品や地域のブランディングを行っています。
私たちも当日、石鏡でとれたワカメをいただきました。上田さん手づくりのカラフルな大漁旗柄の袋や、「海女ゾネス」のロゴにもなっているツバメがキュートで、思わず手に取りたくなるデザイン…!
そして3つ目は、「移住者にも優しい町」であること。町内会長さんをはじめ、町の人々が観光客や移住者などを受入れようと変化しつつある過渡期であることも、このまちの大きな魅力だといいます。そこには、人々の懐の深さだけではなく、長年、町内出身者と嫁入りした女性だけで成立させてきた「海女文化」を町外に開き、次世代へと繋ぐ決意や気概もあるのかもしれません。
「ハイヒールを履く海女」を目指すという言葉には海女文化への想いや上田さんの覚悟を感じました。
また、それらの魅力とは裏腹に、高齢化・人口減少、買い物難民、大量の空き家など全国的な課題や、海女に対する世間のギャップ、海女文化を売り込む仕組みづくりなど、この土地固有の課題などもたくさんある、というお話もしてくださいました。
「自分×石鏡町」について考える(ワークショップ)
伊藤さんと重見さん、上田さんからのインプットトークを経て、「自分×石鏡町」をテーマにワークショップを行いました。トークを聞いて、まちの課題や強み・魅力と、自分ができること・興味があることを照らし合わせながら、付箋に意見を書いて、アイデアをつなぎ合わせながら企画を練っていきます。
各グループには、受入地域の重見さん、上田さんも参加し、より詳しいお話を聞いたり、逆に鳥羽市のお二人も「そういう見方もあるのか!」と気づいたりすることができるのが、このワークショップの面白さでもあります。
ワークショップで出た意見は、商品展開の可能性として、流木アクセサリー(室内装飾)や雑貨のDIYや、干しアワビ、みみそ(郷土料理)、海産物(健康商品として売り込み)などで、海女さんのノウハウを活かすといった面では、「あまスクール」や「あまカフェ@あま小屋」、料理教室(WEB)、磯歩きツアー、磯の生き物探し、海女体験、公民館を使った観光客向けイベントなどの意見が上がりました。ウェットスーツをカラフルにする!という意見も、海女文化のブランディングにつながりそうだなと感じました。
得意な料理を活かしたいという方や、グラフィックデザインや動画・写真を撮りたいという方もいました。
ワークショップが進むにつれて、参加者の方々の表情もいきいきとし、「まちをもっと楽しくしたい!面白がりたい!」という気持ちが高まっていったように感じました。
講座を終えて
各々が今回の講座を通して、地方への関心やまちへの関わり方、自分のできることについて深く考えるきっかけになったのではないでしょうか。そして日本中にはきっと自分のできることを活かせるまち、それを受け入れてくれるまちがたくさんあって、元気で面白い人々がいるんだと思うと、私自身もとてもワクワクしました。これからも様々な地域や、そこで頑張っている人々を紹介していきたいです。そして、今回感じたワクワクを大切にしながら、石鏡町でできること、参加者の方や石鏡町の皆さんの希望の企画の実現に向けて、さらにブラッシュアップしていきたいと思います。次回の「熊野市新鹿町」編も楽しみです!
9/19(木)開催の<熊野市編>の参加者を募集中です!
詳細は下記リンクよりご確認ください。
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「地域とはぐくむ しごとづくり講座」