移住スタイル1 「やりたいこと」が明確。その解決法が「移住」
まず一つ目は、移住を考えたきっかけが「夢の実現」「やりたいことがあったから」というケース。「やりたいことがはっきりとある、やりたいことを実現させるための手段が移住」というスタイルだ。
場所に対するこだわりは少なく、むしろ夢を実現できる場所ならどこでもいい、そのために移住することは当然構わない、という考え方だ。例えば、「長年の夢だった農業を始めてみたい」、「地域活性を学んできたから、そのスキルを活かせる仕事がしたい」、「有機野菜を使ったーガニックレストランを開業したい」といった目的からスタートした移住はこのスタイルにあてはまるだろう。
移住先の場所は、最初はぼんやりとしていたかもしれないが、「やりたいこと」を実現するための準備を進めるうち、おのずと場所も絞られて候補地がはっきりし、最終的には現地をチェックして夢が実現できそうだと判断すれば移住を実行、という流れになる。
つまり、最初に大きくはっきりした「目的」があり、ぼんやりとしていた「場所」が徐々に姿をはっきりさせて「目的」に近づいていく、そしてクロスオーバーした時が決断の時、という流れを考えると分かりやすいだろう。
この移住スタイルでは「やりたいこと」が「仕事」と密接に結びついているケースが多いので、移住先での生活の糧には困ることが少ない、ということも特徴だといえそうだ。
実例コラム
CASE1 夢であった「定年後の就農」を一足早く実現
長野県に移住したH(仮名)さん夫妻の夢は、定年後に農業を営むこと。 会社勤めをしながらも、結婚当初から二人で描いていたプランだった。定年を迎える前に子どもが大学進学し、夫婦二人の生活が予想以上に早く訪れたことで、就農を本格的に考え始めた。
いくつか候補地場所を探してみたけれど、希望条件に治った農地と住居はなかなか見つからなかったというHさん。候補地の中でも最後まで親切に面倒を見てくれたのが佐久市だった。市役所や地元JAの人たちは就農のサポート以外にも、「空き家バンク」を使って住居紹介を行ってくれたそう。
空き家は古くて修繕しなければ住めない状態だったが、足を運んで近隣の人たちに接しているうちにコミュニケーションもはかることができたことで安心して移住を決心。
その土地で暮らしていく「仲間」という感覚を得られたことが、就農と移住への背中を押してくれたようだ。
CASE2 農業を通じていろいろな人をつなげたい、そのための近道が移住だった
千葉県の九十九里に移住してきたSさんは「農業ができて地域おこしにつながる、それを仕事にできて最高」だと思っている。大学で社会福祉と心理学を学んだSさんが興味を持っていたのは農業ではなく人そのもの。
人と人をつなぐような仕事がやりたいと思い、会社員の生活をやめて九十九里で町づくり事業を行うNPO法人に入ることにした。会社を辞め移住を決めるまではとても悩んだそうだ。
でも、移住して正解だったと今は思っているそうだ。農業を通じて人と人の橋渡しすること、人が集まれる場所を作ることが目標だったが、それによって地域のコミュニティが活気を持っていくことがとても面白く、やりがいを感じるそうだ。人生のパートナーにも巡り会うことができたSさんは、まだまだ「やりたいこと」のリストをたくさん持っているそう。移住先の地をどこまで変えていくのか、楽しみな存在だ。
CASE3 窯をつくって陶芸を極めるため、いい材料が手に入る場所に移住
福岡県池田町に夫婦二人で移住したHさん夫妻。 海外でも暮らすなど様々な場所での生活を経験してきたHさんは、40代で陶芸の道に目覚めて3年ほど窯元で修業し、その後に自らの作品を生み出すために独立。修業の時に知り合って結婚した奥様と一緒に、いい土とワラと薪が手に入る土地を探してたどり着いたのが池田町だったそう。
いい作品をつくるためには良質なワラ灰が必要で、そのために無農薬のワラが手に入る土地を探していたそうだ。池田町では山から薪を拾い、廃材を集めて燃料として本業である陶芸に励むかたわら、豊かな自然をいかして農業にも勤しみ、コメと野菜はほぼ自給自足できるだけの生活を築き上げた。