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「地方と東京を行き来する多拠点ワークと働き方を探る②(茨城)」ローカルシフトvol.7 イベントレポート

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前回に引き続き「地方と東京を行き来する多拠点ワークと働き方を探る」と題したローカルシフト7回目は、地方を茨城に絞り、茨城と東京+αで活動されている3名のゲストにお越しいただいた。

茨城・常陸太田でホテルを運営する藤井麗美さん、茨城農家と連携して東京・下北沢で「ママンカ市場」を運営する小出麻子さん、茨城・石岡市八郷にある農園「やかまし村」村長の遠山浩司さん。
第1部 ローカルセッションでは、ゲストそれぞれに茨城の魅力や自身の働き方で感じていることをお話しいただき、働き方ワークショップやディスカッションを通じて、参加者と多拠点ワークの可能性を探った。

チェックインで緊張を解す

今回から始まったレゴを使ったチェックイン。

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制限時間内に、どれだけレゴを高く積めるかグループに分かれて競い合う。初対面とは思えないほど盛り上がる会場!

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アイスブレイクの後は、いよいよゲストのプレゼンテーションがスタート。

どんな路もキュレーション次第

まず始めは茨城県常陸太田市でホテルを経営している藤井さん。従業員一人ひとりがさまざまな係に任命されている点がユニークで、藤井さんは「種まき係」として、「ときわ路」の将来を耕している。

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プレゼンでは「種集める旅暮らし 種まき根のばす多拠点暮らし」をテーマに、ホテルのある茨城とオフィスのある東京、そして鎌倉の自宅とを行き来している中でのリアルな感想を参加者と共有した。

藤井さんは、Webデザイナーやディレクター、ODAコンサルタントなどを経験した後、親が残した事業としてホテルを引き継いだ。 「東京R不動産にホテルのリノベーションしてもらい、国民年金健康保養センターからホテルにしました。単なるハコモノではなく、里山資本主義を基本としたホテルを目指しています。」

これまで33カ国で旅や生活をしてきた藤井さん。 「これまで訪れた中でいいなと思う街は、人の動きがある街で、スーツケース一つで生きられるような「何かを発見する能力」が発揮できるところですね。 サイクルスケール・サイクルスピードで、「自然」と「暮らし」と「生業」が近い街もいいと思います。 また、イベントなどコンテンツめがけていく街には愛着が残っています」 と振り返った。

常陸太田については、「常陸太田は開発が遅れた分、いいものがたくさん残っています。 また、水戸の旧国柄か、変革にオープンなんです」 と街の可能性を教えてくれた。 今後、茨城のために、茨城のダイバーシティ化や文化向上、茨城の野菜のおいしさを発信していきたいという。

職と住との距離がある暮らしを選んだことを正解にしていこうという藤井さんの生き方。 ネットが普及し、遠隔でできることが多くなったので、フリーアドレスで働くことに可能性を感じている。

「生き方はキュレーションし放題。茨城もキュレーションし放題です。笑」 そう語った藤井さんの笑顔が印象的であった。

ムラとマチをつなぐ暮らし

続いては、石岡市の八郷で「やさと農場」を運営する遠山さんによるプレゼン。 「マチとムラを往還する生き方・暮らし」をテーマに、ムラ(八郷)とマチ(大塚)をつなぐ取り組みについて語ってくれた。

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筑波山の麓にある石岡市八郷。2008(平成20)年5月に「やかまし村」スタートした。
耕す人でありたいという遠山さんは、自分たちの暮らしを自分たちでつくりだすことが充実につながるのでは、と提案している。

ある時、「やかまし村」から東京に帰る際に「日常に戻るのか〜」というメンバーの言葉に、「ムラは日常でない?」と疑問を感じた遠山さん。
考えると、東京は「一人で・結果・消費・競争」=今のマチ  農場は「みんなで・過程・生み出す・共創」=ありたいマチ という構図が見えてきた。

その後、2008(平成20)年11月に「やかまし村」メンバーで、東京・大塚でシェアハウス開始し、マチを耕し始めた。それでも、「マチとムラ両方を耕していたつもりが、違和感が大きくなっていったんです」と遠山さん。
八郷での八豊祭を体験し、マチに足りないモノ・コトが明白になっていった。

大塚・豊島には何があるのかと探っていたところ、大塚の商店街の「フルーツおぎむら」が閉店になった。 その際にお店への「ありがとうメッセージ」板をシャッターに設置したところ、15枚分もメッセージが集まり、みんな愛着を抱いていたことがわかった。 このことをきっかけに「としま会議」を開き、近隣住人との意見交換や交流を行っている。

衣職近住で、コミュニティーも仕事も等身大にある暮らし。 それが充実を感じられる暮らしではないかと、遠山さんは教えてくれた。

「やかまし村」では、2015(平成27)年1月31日に「やさと移住ツアー」を開催予定だ。 (新宿8:00—八郷—新宿21:00というスケジュールで3,000円) 八郷での居・職・住を実際に紹介し、体験して考えてもらうツアーとなっているので、移住に憧れがあるが暮らしに不安がある方はぜひ参加してみてはいかがだろうか。

●やかまし村

HP:http://noisyvillage.org/

都市にも子どもの成長を見守れる場所を

最後のプレゼンは、東京・下北沢で「下北沢×野菜×子育て」をテーマに「ママンカ市場」を運営する小出さん。 「ママンカ市場」は2009(平成21)年10月から始まった農家直売イベントで、毎月第4日曜開催されている。

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「ママンカ市場」では、販売場の提供だけでなく、その先をつなげることをテーマとしている。 例えば、いちごの出荷時期以外の収入をつくり出すために、いちごを使ったプロダクトを共同開発してきた。小出さんが勤める「クチトテ」がデザイン会社のため、パッケージデザインやECサイトを制作している。
これまで発売したプロダクトは、いちご酢「すずこ」やイクスピアリと共同開発のいちごビール「AMY」、干しいちご「星おとめ」、いちごアイス「紅羽」など。
パッケージのかわいらしさとおいしさでどの商品も評判だという。

また、「ママンカ市場」で大きなテーマとなっているのが子育てだ。

「子育てに取り組むようになったのは、下北沢でスナップしていた時に聞いた、”子育てし始めたら来づらい場所になった”という言葉がきっかけです」と小出さん。

下北沢の地で地域子育てを目指し、活動をしてきた、「ママンカ市場」は5年目となり、その成果が目に見え始めた。1年目の時に小さかった子どもが、もう小学生になり、出店者との絆がしっかりとできあがっているという。

小出さんが東京と茨城とを行き来する中で実感するメリット・デメリットは、体力勝負で車社会なところがデメリットだが、メリットとしては気分の切り替えができ、考え方の幅が広がること、素材が集まりやすいと教えてくれた。

また、「『東京から来た』が良くも悪くも影響する」と小出さん。 東京在在勤の立場から、小出さんなりの茨城へのアプローチをし続けている。

●ママンカ市場(毎月第4日曜開催)
東京都世田谷区北沢2丁目36-15 眞龍寺境内

HP:http://www.mamanqa.com/

移住ワークショップ

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今回の参加者は、東京在住の他、茨城在住や茨城出身でUターンを考えている人、地元で就職や起業したい学生など。 具体的な移住のための気づきが欲しいと、レゴを使った新しいワークショップを試みた。

まず、プレゼンで気になったことや東京の存在について話し合い、「こんな多拠点ワークはどう?という提案をそれぞれグループ内で行った。

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そして4つのグループに分かれて、
 ・提案名
 ・コンセプト
 ・働き方のアイディア
 ・レゴでそのアイディアを表現
の絞り出しに挑戦。

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それぞれのグループが、話し合った内容をさまざまな形でアウトプットしてゆく。

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各グループごとに発表

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それぞれ発表順に、
・提案名「魅力伝達人」
 東京とどこかのモデルケースとした案で、地方の良さを東京で伝えることを目指した。

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・提案名「ローカルパッチワーカー」
 人の流れを資源と考え、地域分断をつなぐ役割をつくる。

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・提案名なし
 東京と地方との刺激の種類は違う種類と考え、扉を開く役割をつくる。

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・提案名「行商人LIFE〜循環型よろづや〜」
 タイニーハウスでの多拠点を想定し、移動の経費化と、どこかで仕入れた物を移動して別の場所で売るということを提案した。

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話しながら頭と手と体全体を使ったことで、クリエイティブで充実したワークショップとなったようだ。

第2部 ローカルドリンクス!green drinks お茶の水vol.8

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第2部のdrinksでは、ママンカ市場で出店する秋庭覚さんによるイタリアンが振る舞われた。
素材は秋庭さんの実家である茨城県古河市「AKIBA-noën」で収穫された野菜だ。
どの野菜も野菜自身にしっかりと味があり、参加者は皆茨城野菜のおいしさを味わった。

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最後に行われたショットプレゼンでは、茨城県職員の方が茨城県・県北エリアでの取り組みを紹介。 茨城にフォーカスした今回は、参加者それぞれが茨城の特性を読み取っての具体的な提案ができた。

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大川 晶子
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私が紹介しました

大川晶子

大川 晶子1986年、静岡県三島市生まれ。エディター・ライター。 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科(近代建築史専攻)を卒業し、住宅やインテリア雑誌の編集部を経てフリーランスとして活動しています。たくさんの人・もの・ことに触れてその魅力を伝えることで、一人でも多くの方の暮らしをより豊かなものにできたらと思っています。

人と風土の
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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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