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2017年1月20日 大見謝将伍

「恋愛」と「交流・関係人口」を生む、地域資源を活かした街コンのつくり方 ー 「三宅島・島コンツアー2016」レポート

東京都にある離島、三宅島。伊豆諸島北部に位置し、人口約2700人ほどが暮らす島だ。時代を遡れば、島流しされた罪人(とはいえ、身分が高く、教養のあるような人々)を受け入れる島だった歴史もあり、さまざまな文化が混在する地域であるのは興味深い。

東京からも程なく近く、海と山などの自然環境が豊かで、文化成熟度も高いこの島では、一体どんな暮らしができるのだろうか。観光で訪れるだけではわからない、三宅島の魅力は、地元の人の声に耳を傾けたり、一緒に過ごすことで見えてくるに違いない。

そういった「暮らす」あるいは「移住」を意識するだけでなく、若い男女が出会う「街コン」の要素を組み合わせた「島コン」ツアーが2016年9月17日~19日の3日間で開催された。都会で暮らす女性たちが、三宅島を訪れ、島で暮らす男性と出会い、一緒に過ごすことで、島の暮らしを深めながらも、カップル成立を手伝うこちらのツアー。2013年からはじまり、今年で開催4年目となる。

2016年は、4組のカップルが成立して終わった。では、その3日間にはどんなことがあったのだろう。


文:大見謝将伍  写真:根岸里紗

【DAY.1】都内からスタート、共に船に乗り込み三宅島へ

シルバーウィークの三連休に、島コンは行われた。

9月17日(土)夜。場所は、東京は京王線沿い・笹塚駅にある居酒屋「ばんやしおさい」から、ツアーがはじまった。

三宅島をはじめ、伊豆諸島直産の生鮮食材や地酒を仕入れた、島にゆかりのあるお店
▲三宅島をはじめ、伊豆諸島直産の生鮮食材や地酒を仕入れた、島にゆかりのあるお店。

お店には、このツアーのためにと、三宅島からやってきた14名の男性たちが先に到着。先にスタンバイし、女性たちが来るのを待ちわびる。男性陣は20〜40代、職業も役人から農業、漁業、自営業など幅広いメンバーが参加する。

今回は、東京や埼玉の首都圏から7名、宮城から1名、20〜30代の女性が島コンに参加した。開始時刻に合わせて、徐々に集まりはじめた女性陣は、それぞれ男性陣のいる席へとエスコートされる。

乾杯!

人数が揃うと、「乾杯!」の声が上がり、まずはざっくばらんに互いに話すところから会がスタート。

「飲みニケーション」から見える人柄は、やはり大事だ。この場を通じて、第一印象も決まってくる。

男性陣のなかには、今年初参加の者がいれば、2〜4回目と雰囲気に慣れている者もおり、初対面での会話のアプローチもそれぞれ。

とはいえ、まだ会ははじまったばかりなので、まずは「はじめまして」とゆるやかな時間が流れていく。

ブラジリアンカラーが特徴の大型客船「橘丸」
▲緑と黄色のブラジリアンカラーが特徴の大型客船「橘丸」。東京〜三宅島〜八丈島の航路を進む。

2時間ほどの飲みの席が終えると、参加者は三宅島へ向かうべく、船乗り場へ。22時30分の東京発、明朝5時の三宅島着である。

意外と知られていないが、三宅島行きの東海汽船が待つ「竹芝ターミナル」は、東京モノレールゆりかもめ・竹芝駅、JR浜松駅が最寄り駅だ。

船に乗り込んだメンバーは、東京の街の夜景を眺めながら、2次会も兼ね、それぞれが準備してきたお酒を手に取り、夜な夜な交流が進んでいく。

東京の街の夜景を眺めながらの交流が続く

お店であまり話せなかったからこそ「この機会に」と声をかけ合う。島のこと、それぞれの仕事や趣味のこと、そして翌日のスケジュールのこと、話題は尽きない。

それぞれ遅くまで残って、会話する者もいれば、程よく寝台へと戻り、次の日に備える者も。

 

【DAY.2】島の魅力に触れながら、近づいた二人の距離

9月18日(日)早朝。薄暗がりのなか、船が港に到着。参加者は、眠たい目をこすりながら、島へと足を踏み入れる。

早朝に到着する船
▲早朝に到着する船便に合わせて、宿の送迎バスが港まで来ることも多く、新鮮な光景が広がる。

次の予定までは少し時間があるため、男性陣は各自いったん帰宅、女性陣はバスに乗り込み、宿へと向かう。

到着したのは、阿古地区にある民宿「夕景」。三宅島は中心部に火山があるため、住宅や宿が並ぶのは、島の海岸近辺となっているのが特徴だ。夕景も、少し歩けば、海と夕日が眺められる好立地にある。

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▲釣り、仕事、観光とさまざまなお客さんが利用する、民宿「夕景」。

宿では、仮眠、朝食をとり、体力をつけ、三宅島内での島コンツアーがはじまる。

夕景のデッキテラスには、総勢20名以上もの若者が集う。夜のマッチングタイムまで島内でのレジャーを通して、距離を縮めていく。

3play・リーダーの谷順二さんの挨拶
▲3play・リーダーの谷順二さんの挨拶風景(夕景、デッキテラスにて)。

島コンを運営する、島の若手経営者が集った任意団体「プロジェクトチーム 3play」のリーダー・谷順二さんからの挨拶となる。

「ツアー全体で回る場所はもちろん、島の人を通じて、三宅島の魅力を感じてもらえるとうれしいです。恋愛は両目で見つめ相手を知り、結婚は片目をつぶって相手を許せるといいですよね」(谷さん)

そんな茶目っ気がありながらも、激励となる言葉を、残り2日を過ごしていく参加者は受け取った。その後、早速、参加者同士での自己紹介タイムへ。

PRタイム

1人5分という短時間のなか、相手のことを知りながら、自分をPRする。後々のアクティビティにもつながる大事な一時。全員が面と向かって話せるように、一巡したところで終了となる。

好感触な相手を紙に書く参加者

昨晩からの交流を経て、現時点で、好感触な相手が誰なのかを書き出していく参加者たち。記入を終えたメンバーは、次のアクティビティのため海へと向かう。

夕景から北へ車を10分ほど走らせ、ビーチにたどり着く。島でつくられたお手製の弁当で、昼食をとったあとには、お待ちかねのシーカヤックがはじまる。

男女ペアとなり、浜辺から海原へとゆっくりと漕ぎ進めていく。

ペアでシーカヤックに乗り込む
▲息を合わせなければ、なかなか前に進まないシーカヤック。

見晴らしのよいエリアまで漕ぎ進めていく参加者
▲山と海の2つが一望できる、見晴らしのよいエリアまで漕ぎ進めていく参加者たち。

様々なアクティビティで楽しむ参加者
▲シーカヤックには数に限りがあるため、待っているメンバーは、水鉄砲を使ってチーム対抗でのサバイバルゲームを楽しむ。大の大人が必死に追っかけ、逃げまわり、はしゃぐ姿が印象的だ。

近くの港で飛び込み体験も
▲ビーチすぐ近くの港では、「飛び込み」を体験しながら、ゆるゆると泳ぐメンバーもおり、海を堪能していた。

海でのアクティビティを終えると、島唯一の温泉「ふるさとの湯」へ。ゆっくりと疲れを癒やしたあとには、夕景に戻って、次のイベント「島嫁センパイたちとの女子交流会」がはじまる。

島嫁センパイたちとの交流会
▲センパイの話に耳を傾ける参加者たち。過去に開催された島コンをきっかけに、移り住んだ女性もおり、「仕事(転職)は、どうしたのか」など、参加者からの素直な疑問もここで掘り下げられた。

どんな地域でも、そこで暮らすことの良し悪しはある。大切なのは、自分が暮らしたいかたちがあるかどうかの「相性」だろう。それは、パートナーに限らず、地域にも通じることかもしれない。

そういった部分も含め、出産や子育てなど、女性ならでの視点で話が広がっていく。さらには、Iターンでの先輩移住者もおり、島コン参加者に近い立場の人もいたため、話を聞く姿は真剣そのもの。

「出産のときには、島外に出る」「地域全体で子育てをしているような感覚」など、さまざまな声が飛び交うなか、島ぐらしのリアルを知る、貴重な時間を過ごすことに。

BBQ
▲BBQでは、それぞれが、好きなところで、好きなように交流するなか、日が沈んでいった。

島暮らしを真剣に考える時間が去ったあとは、またゆるやかに楽しむ時間に。

男性陣が合流して、マッチングタイムに入るまでの最後の交流として、BBQパーティーがはじまる。

盛り上がるBBQ会場
▲3play運営メンバーをはじめ、島の人がBBQを盛り上げてくれた。

カクテルブース
▲カクテルブースでは、島特産にもなっているバッションフルーツが使われたお酒が用意された。なんとドリンカーは、その生産者が担当していたりと贅沢なおもてなし。隣には、DJブースと運営メンバーの遊び心が垣間見える。

新鮮な魚など豪華な食卓
▲島で採れたての新鮮な魚も食卓に並び、食の豊かさを感じずにいられない。

2Fデッキへと上がり、海と夕焼けを眺める参加者も
▲夕暮れどき、2Fデッキへと上がり、海と夕焼けを眺める参加者もいた。

こうしてBBQが盛り上がるなか、ついにマッチングタイムとなる。島で共に過ごした時間を振り返りながら、男女それぞれ、自分が心に決めた一人を記し、その結果を待つこととなる。

3play運営メンバーが司会進行をし、カップルとして成立した二人の名前が呼ばれる、緊張の瞬間・・・。喜ばしくも、4組のカップル、8人の名前があがる結果に!

カップル成立!
▲カップル成立してのコメントを、司会から求められる二人。お祝いの意味も込め、各カップルごとにシャンパンが用意されていた。

念願のカップルに喜ぶ男性参加者
▲今年で4年目の参加だったという男性。念願のカップルとなり、その喜びはきっと大きかっただろう。

この時点で、参加女性8名中4名がカップルとなったが、まだ終わりなわけではない。会終了となるギリギリの時間まで、さらなる交流が続き、夜が更けていく。

 

【DAY.3】自由時間で知られざる島を堪能、1泊だけでも募る「また来たい」

9月19日(月)。最終日の午前中は、フリータイムを使っての三宅島案内。

成立したカップルは一緒に行動し、残念ながら不成立となったメンバーもそれぞれ懇意の人と一緒になり、島をエスコートするような時間となる。

王道の観光スポットから、地元の人だからこそ知っている名所まで、きっとさまざまな場所を訪れたのだろう。昼食も挟みながら、島で一緒に過ごせる最後の時間が過ぎると、東京へ戻るための港へ。

港に集合する参加者
▲お土産を抱えながら、港に戻ってくる参加者もおり、島を堪能した様子を伺えた。

島コンを終えての挨拶が、3play・谷さんから告げられた頃、船が港へ近づいてくる。惜しみながらも、ついに別れのとき。

船に乗り込む前には、参加者全員での集合写真!

2日前の居酒屋では見られなかったような表情、距離感は、このツアーの成果を物語っている。

最後に撮影した集合写真

船が出発すると、見えなくなるまで手を振ってくれる島の人たち。そんな温かみを感じながら、「また来るね」という想いを胸に、8名の女性は三宅島を去る。

三宅島

 

三宅島の「交流・関係人口になる」きっかけをつくる島コン

蓋を開けてみれば、4組のカップル成立となった「三宅島 島コンツアー2016」。三宅島の暮らしと人に興味がある8名が参加したわけだが、カップル成立とは違った価値が、この2泊3日にあったように思える。

参加者が、島の男性と知り合うきっかけになったのは、もちろんのこと、ツアーに携わる人との交流も多く見られた。そのような意味でも、島コンは「島の外と内をつなぐためのプラットフォーム」とも言えるだろう。

一度でも話す機会があることで、「また三宅島に行きたい」と思える、そして「顔の見える関係性で、島に会える人がいる」というのは、その地域の大きな魅力だ。また、そこで暮らす人こそが「地域資源」になる、好ましいかたちが三宅島にある。

「移住人口」だけでなく、移住せずとも関わりを持つ・定期的に足を運ぶような「交流人口・関係人口」が重視されるなか、移住のステップをつくるための離島の取り組みとして、一つのモデルになるのではないだろうか。

三宅島の島コン、2017年の開催にも乞うご期待。

寄り添う男女

大見謝将伍
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大見謝将伍

大見謝将伍1988年生まれ。沖縄-伊平屋島出身。バーテンダー、外資IT ベンチャーを経て、2013年よりフリーランス(企画・編集・執筆)として活動をはじめる。「つたえる、つなぐ、まぜる」をコンセプトに、地域に根付いた「はたらき方/くらし方」の研究プロジェクト「coqktail/カクテル 」主宰。「おきなわ移住計画」代表、商店街ウェブマガジン「焦点街」編集長など。 [WEB] http://nurariworks.com/ https://note.mu/omija

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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