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佐倉の「仕事」と「宿泊」を考える1日!
〜第2回 佐倉ミライ会議 x ローカルシフト vol.9~イベントレポート

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江戸期より城下町として栄えてきた千葉県佐倉市の新町地区で新たなまちづくりの試みを話し合う「佐倉ミライ会議」の2回目が今年1月31日(土)、ローカルシフトVOL.9とのコラボレーションで開催されました。
開催会場は、昨秋にオープンした新町地区の「おもてなしラボ」。ゲストハウス、コワーキングスペース、レンタルスペースが一体となったクリエイティブな空間に、地元の佐倉市をはじめ、東京や関東圏から約30名の参加者が集まりました。
今回の会議のテーマは、佐倉の「仕事」と「宿泊」。ゲストスピーカーに、ナリワイの伊藤洋志さんと宿場JAPANの渡邊崇志さんのお二人をお迎えして、参加者の皆さんと佐倉のこれからについて考えを共有し、深め合い、輪を広げていきました。その様子をお伝えします。

schedule:2015.1.31 sat

佐倉の町を歩く

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ひとつのテーマに関心を持って集まる人々。テーマは共通でも、それぞれの背景はさまざまです。
佐倉で生まれ育った生粋の市民、生まれは他所でも佐倉在住数十年の人、近隣市町村に住んでいて何となく知っている人、聞いたことはあるけれど今回初めて佐倉を訪れた人。佐倉とはどういう土地なのか?何ごとも「百聞は一見にしかず!」ということで、みんなで町歩きに出かけました。

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佐倉の大きな特徴は、かつての城下町ということです。その発展は主に江戸時代以降に見られましたが、その前後の時代に渡って幅広い歴史の積み重なりが見られます。今回の町歩きは、そのイントロとして分かりやすい部分。佐倉の中心地である成田街道沿いの「新町通り」界隈を見て回りました。

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ご案内いただいたのは佐倉市役所公園緑地課の西野剛史さん。
西野さんは文化課に7年勤務されていたこともあり、町歩きの知識がとても豊富な方です。大のサムライ好きでもあるとか。
起点のおもてなしラボを出て、佐倉城址方面に歩き出しました。新町通りは商家町の目抜き通りで、老舗が多いのが特徴です。城下町になくてはならない老舗の武具屋「加瀬武具店」さん。「手づくり工房さくら」さんは、もともと大正末期に乾物屋を営んでいた商家の空き家を活用したお店。1階がカフェ、2階では佐倉市をはじめ近隣地域で活動する作家の手づくり品を販売しています。それから、郷土の文化、伝統行事、物産などの紹介や観光情報の提供を行う「佐倉新町おはやし館」などがあります。

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「明治の呉服商駿河屋」と書かれた暖簾のこの建物。
幕末期に長州藩の桂小五郎らが剣術の他流試合のために宿泊した旅籠「油屋」(郷宿)の跡地です。明治時代に呉服屋になり、現在はNPO法人佐倉一里塚が所有者の今井家から借り受けて「町並み情報館」として活用しています。主屋は呉服屋らしい造りになっていて、大きな神棚があり、奥には呉服屋時代に建てられた土蔵や、深さが22メートルある井戸が保存されています。趣があって素敵な場所です。

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新町通りの南に延びる裏新町通りに入ると、刀剣に特化した日本で唯一の美術館である塚本美術館や、明治期の大火の教訓を刻む土蔵造りの旧山口家住宅などがありました。
町歩きをして分かったことは、100年を超えるような伝統的な建物の存在と、その保存、活用の例が見られる一方、やはりメンテナンスの行き届かなくなった古い建築物も、通りの所々に目立ったことでした。
町歩きのあとは、ふたたび「おもてなしラボ」へ。ゲストスピーカーによるプレゼンテーションが続きます。コーディネーターは泉山塁威さん(ココロココ副編集長/明治大学理工学部建築学科助手)が務めました。

場所との関わり方、日常からの移動距離

まずは「ナリワイ」の伊藤洋志さんが、ご自身の「仕事」や、佐倉の町を歩いた感想などを語りました。

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「ナリワイ」という伊藤さんの屋号。
それは、自分の生活に密着した仕事をたくさん作ることを表しているそうです。伊藤さんが「ナリワイ」として手がける仕事はバラエティに富んでいます。その一部を挙げただけでも、
・モンゴル武者修行ツアー
・全国床張り協会
・梅農家(遊撃農家)
・ブロックハンマー解体協会
・古座川ハナアミ
・木造校舎ウエディング
など驚くほど多彩(多才)ですね!

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「自給しながら余ったものを仕事にすることを『ナリワイ』と定義しています」と伊藤さん。「自分が欲しいものを、自分のためだけでなく、ちょっと余るくらい作って、他人にお裾分けしようという作戦です。それに、仕事を通してからだが丈夫になることが必要。そんな仕事ってどんなのか日々探しています」
巡り会うさまざまな「ナリワイ」に共通する点には、「在庫が発生しないので、売れた分だけ収益が増えていく」という構造も挙げられるようです。

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従来の仕事観を逆手にとるようなアプローチで「ナリワイ」を創出する伊藤さんですが、佐倉の「宿泊」と「仕事」、そしてまちづくりへの関わり方とは?
「僕の仕事には旅の要素が非常にあります。宿泊といえば旅ですが、旅で重要なのは、非日常、やりきった感、適度な難易度…」
ここから、伊藤さん独自の「旅」プロデュース術が始まります。まず、旅の面白さについて、
・「場所との関わり方」の超短軸
・「日常からの移動距離」の超短軸
の2つを具体的な指標として挙げました。

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「参加度をある程度用意することで、旅の面白さが開拓される」と伊藤さんは持論を展開します。 つまり、面白い旅を演出するには、旅人と地元が関わるチャンスを創出することが重要ということです。 「ある程度」というのは、旅を面白くする「さじ加減」。「さじ加減」で、旅のニュアンスが変わってくる、と。 そのあたりは伊藤さんだけが知っているコツと言えるかもしれません。
これを踏まえて佐倉の場合、「旅、宿泊を考えるのであれば、何か一年単位で関われるような仕掛けを考えて、バリエーションも増やしていけるんじゃないか、と…」

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「いろんな旅を作ることができれば、それが自ずと仕事にもなるのではないかと考えました。さっきの町歩きでも、かなり荒れた空き家もありました。荒れていても、もし10年間無料で貸してもらえるのであれば、かなり思い切ったことができると思いますね」 佐倉の人々にとって大きなヒントになりそうですね。伊藤さんは「ナリワイをつくる:人生を盗まれない働き方」などの著作もお持ちですので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

■伊藤さん出版書籍
amazon:伊藤洋志さん書籍

宿から宿へ、ローカルを楽しむ広がりを

続いて、株式会社宿場JAPAN代表取締役の渡邊崇志さんによるプレゼンテーション。

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渡邊さんの仕事スタイルは、伊藤さんの「旅しながら」(遊撃)スタイルとは対照的。ひとつのエリアでモデルを組み上げて、仲間を増やし、仲間のつながりで面展開。昔ながらの暖簾分けスタイルにも近いものがあります。

その拠点は東京・品川。オフィスビルやホテルが建つイメージの品川ですが、駅から15分も歩けばチェーン店のない下町風情があります。そこに渡邊さんの外国人バックパッカー向け宿「ゲストハウス品川宿」はあります。

品川といえば東海道五十三次の一の宿。けれども「宿場町とは名ばかりで、宿が一軒もなかった」と開業当時を振り返る渡邊さん。 「旅から帰って来た時に帰りやすいし、ナショナルチェーンの店がなく、個人の顔が見える関係がいい」と感じたことが、品川を拠点に選んだきっかけだそうです。

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開業までの苦労は様々あったそうです。たとえば、旅から戻ってきたとき、手元に残っていたのは3万円。それを元手に1年間、品川の空き家に住まいつつ、「町修行」として、ひたすら祭りの手伝いや町の御用聞きのような経験を積みます。それから1年後、行政の方から物件の話があり、商店街の会長さん、物件の大家さんと話をし、「貸してもいい」という話に。ただし「600万円かかる」と。
当時、まだ渡邊さんの手元にはまとまったお金がありませんでした。それでも、「借ります」と答えて、勝負に出ました。 資金繰りには苦労して、多くの人に助けられましたが、無事、念願の宿開業にこぎ着けたそうです。

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「ゲストハウス品川宿」は、建物が地下から地上三階まであり、25人のお客様が滞在できます。 5年前の開業時、宿泊代はワールドスタンダード25ドルの2500円、今は環境が変わって2600〜3500円。 年間98%という驚異の稼働率で、今では年商3000万円ほどの事業に成長しているそうです。

「宿場JAPANが手がけるゲストハウスは「地域融合型」が特徴。それは「ゲストハウス」「滞在するお客様」「地域の住民・コミュニティ」の3者が一体となった「互恵関係」といえるかもしれません。
毎年、地元のお祭りに外国人のお客さんを案内したり、昨年で4回を数えた「旅アガーデン」では旅人の写真とビアガーデンを組み合わせて地域の人々と交流の場を創造してきました。年月を重ねるうち「宿」「客」「地域」の3者が自然に融け合っていく様がよく分かります。「感動が広がっていくという実感」が大切なのだと渡邊さんは言います。

こうした品川での取り組みを経て2012年10月、長野県須坂に姉妹宿の地域融合型「ゲストハウス蔵」、2013年6月には品川エリアで2軒目となる地域融合型「シェアハウス品川宿」がオープン。
昨年12月には、五軒長屋と呼ばれる木造家屋をリノベーションした東京で一番小さな古民家ホテル「Bamba Hotel」を同エリア内に開業しました。デジタルの技術と、人のつながりをうまく活用することで、地域融合を伴うサービスの広がりが実現しているそうです。

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「宿泊を始めて100%考え方が変わったこと…」渡邊さんは語ります。
「地域の魅力っていうのは、自分たちで探すものだと思っていましたが、じつは、お客さんが教えてくれるものなんだ、と気付きました」そんな思いから、佐倉の方々へのメッセージ。
「品川も本当に田舎っぽいところがあるんですが、ぜひ、佐倉の人々とも、宿から宿に人がつながっていって、ローカルを楽しむような広がりを持っていけたらと思います」
この会議から、品川と佐倉の交流のきっかけも生まれそうですね。
■宿場JAPAN
HP:http://shukuba.jp/

それぞれの本音を示し合う

プレゼンのあとは、おもてなしラボの鳥海孝範さんを加えてのディスカッション。
「地元にどう関わるのか」という渡邊さんの質問に対して、伊藤さんが地元の丸亀に関わって活動をされているお話があったり…

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渡邊さんから「人が動いて、振動しないと、もてなす側ばっかりが頑張りすぎちゃって…、伊藤さんみたいな人材がしばらくうちの街にいてくれたら嬉しいな」とラブコールを送る場面も。

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鳥海さんが「おもてなしラボ」を開業してからの状況を話すと、地元の参加者の方から意見も多く出て、有意義な議論が交わされました。
佐倉は伝統のある城下町。空き家の活用という課題がある一方で、そこに何代にも渡って暮らし、佐倉の「今」を築いてきた人々の、言葉にならない努力があります。そうしたものを踏まえて、これからの人々が何をしなければならないのか。
もちろん、答えはひとつではありません、それぞれにやり方があります。たとえば、従来型の紙媒体を用いた手法に、SNSを駆使した新しい手法を取り込んでいくといった世代横断的な課題もあります。

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お互いが本音を示し合いながら、新たな道を模索する場面も見られました。 地元の方と佐倉市外の方が一緒になって、こうしたコミュニケーションを図ることができたのは、今回の会議で一番の収穫だったかもしれません。

実りあるワークショップ、そしてカンパイ!

ディスカッションのあとは、5つのチームに分かれてワークショップ。白熱した議論のあとで少し短めでしたが、実りのあるチームワークでした。

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各チームによる発表。限られた時間の中で、これから発展できそうな内容がたくさん提案されました。

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そして、最後はお待ちかねのgreen drinks佐倉です。カンパイ!ホットな議論の場から、一転、和やかに、賑やかに。楽しいひと時は終了時間を過ぎても続きました。

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今回のgreen drinks佐倉のケータリングは、佐倉・ユーカリが丘でカフェ「fetr」を営む菊地知美さんより、佐倉の食材を中心に作ったお料理でした。 たに農園さんの野菜や、旭鶴さんの酒粕を使ったカルボナーラ風うどん、それからクラフトビールのロコビアさんの「佐倉香りの生」など、どれも美味しかったです!

私が紹介しました!

山本佳典

山本佳典keisuke-yamamoto

文筆家。広島県生まれ。2003年、上智大学外国語学部を中退し、1年間の米国滞在を経て渡英。キングストン大学で映画・芸術史を専攻しながら、芸術、哲学など多分野にわたって知識を深める。大学卒業後に帰国。日本国内で職を転々としつつ、文筆家として活動を開始。国内外で幅広く取材・執筆し、小説執筆など創作活動も行う。現在は成田市に拠点を構え、日本の近世から現代までの歴史的変遷を取材中。お酒、料理、本、音楽、能楽、旅などを好む。

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