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2017年1月26日 大見謝将伍

三宅島での「action」「re-action」づくりを担う、若手プロジェクトチーム「3play」

2016年の開催で4年目となった、三宅島の島コンツアー。 島コンは、三宅島の暮らしに興味のある女性が、島に足を運び、島民と触れ合うことで、交流を深め、移住促進につなげていくツアーである。「移住」を少しだけ意識した、「観光」と「街コン」を組み合わせたプログラムとも言える。

2016年は、2泊3日という日程のなか、8名の女性が島外から参加し、4組のカップル成立で終えることとなった。

一見すると、どこにでもある「街コン」の島版なのだが、顔の見える関係性がある島民を巻き込むことで、「地域密着型の街コン」、さらに言えば「まちづくりとしての街コン」としての取り組みでもある。

その仕掛け人たちが、島プロジェクトチーム「3play(スリープレイ)」。「島コンは、ただの入口でしかないんですよ」と3playメンバーの小島幹生さんは話す。一体、どういう意味だろうか。

写真:根岸里紗

「島コン」って何?という方はまずコチラ
⇒三宅島「島コン」ツアー2016 密着レポート

「大人が活き活きとしている島」をめざして

3play01-2
▲島コンBBQ終了時の3playメンバー。建設、農業、観光など、多様な立場・視点から島について考え、活動を進めている。

3playは、2013年4月に結成された任意団体である。島内のさまざまな業種で働く、30〜40代の経営者陣を中心に、男女14名で構成されたチームだ。

島をよくしていくために、島民からの声を集め、自治体に届けるための協議会としての役割を主に担う。その傍ら、観光協会と協力しながら「島コン」のような交流・移住促進のためのツアー運営にも携わっている。

「『島をよくする』というと、大きく聞こえるかもしれませんが、もっとシンプルな話で、『大人が活き活きとしている島』にできたらと思っています」

そう話すのは、3playメンバーの一人である穴原奈都さん。現在は、育児のために、あまり活動に参加できていないというが、3playの活動や三宅島の魅力について話を聞いた。

 

「島離れ」を繋ぎとめ、新たな若者を呼び込むために

穴原奈都さん
▲穴原奈都さん(島内外をつなぐ船が行き来する、三池港にて)

「3play、そして、島コンは、『人口を増やそう』という意識を持って活動が始まったんです」(穴原さん)

少しだけ、火山の話をしよう。

三宅島の象徴ともなっている火山。1983年の噴火を経て、2000年にも噴火があったため、全島民が島から避難し、人口が0になった時期もあったほどだ。

2005年に入ると​、避難指示が解除され、島民が戻りはじめるも、元々いた約3,800人には届かないどころか、若者を中心に年々人口減少となる地域となった。現在は、約2,700人が島で暮らす。

三宅島は、高校まではあるが、大学などへ進学する際には、島外に出ていかなければならない。そこから、地元に戻るタイミングを掴めずに「島離れ」が生まれる状況があるのだ。

「人口が少なくなるなか、Uターンはもちろん、Iターンも含めて、若者が島に集まり、島の魅力を発見できるようなきっかけが必要でした。ただ、島で暮らすための仕事や住まい、生活するうえでの子育てなどの情報発信ができていませんでした。それを打開しようとはじまったのが、島コンでした」(穴原さん)

そうして、島コンがはじまり、運営チームとして3playが結成されることとなった。

 

三宅島には「火山」と「チーム」がある

穴原さんには、島の暮らしについても伺った。今は休業しているが、島のネイチャーガイドとして、観光で訪れるお客さんに、火山や森など島の自然の魅力を紹介するような仕事をしている。

メガネ岩
▲阿古地区の「メガネ岩」は、溶岩流が波で侵食されてできた奇石。この岩場周辺は、ダイビングスポットとしての高い人気がある。すぐそばには、体験火山遊歩道もあり、三宅島では、火山という地域資源をところどころで感じられる。

「火山こそ、三宅島の魅力なんです。ときに噴火することはあっても、地球の鼓動を感じるような島であることは誇りでもあります。この島にいると、火山はもちろん、そういった自然に則して暮らしていることに気づくんです」(穴原さん)

例えば、東京・竹芝と三宅島をつなぐ船も、船の発着場所が毎日変わる。それは、日々、潮の流れが変わるからだ。島にある3箇所の港のどこに行けばいいのかを一定の時間になってから島民は知る。

そういった自然を寛容に受け入れながら、暮らしていく。穴原さんは、島外に出て、働いて時期があったからこそ余計に、その魅力を再認識したという。

お子さんが生まれ、母親になってからの生活で感じる変化はあったのだろうか。

「やっぱり、島だと子育ての心配がなくていいです。それは、家族や親戚だけじゃなくて、地域全体で自分の子を気にかけてくれますからね。それは、3playの活動にも通じますけど、島全体がチームみたいなもんなんですよ」(穴原さん)

 

新たな「アクション」「リアクション」を生んでいく

そんな穴原さんが関わる3playが仕掛ける「島コン」だが、4年目になりフェーズが変わるなか、どんな手応えを感じているのだろう。

「実際に、参加者が島に移住してくれたことは大きかったです。また、3年目までは補助金事業だったのですが、4年目からは自治体の力を借りることで運営できるようなりました」(穴原さん)

また、島コンで得た情報をもとに、これまで役場になかった「移住定住課」を提言し、その設置までをサポートした。これは、一つの功績と言えるだろう。

小島幹生さん
▲参加者に楽しんでもらえるよう、島コンの現場進行を務める小島幹生さん。その表情は真剣そのもの。

そのように、地域を仕組みの部分から変えるための”入口”として活動してきたわけだが、もっと個人に目を向けたとき、参加する男性陣に変化が見られたという。

「1年目に女性を前に全然話せなかった人が、2年目、3年目と参加するなかで、自己PRがうまくなったり、相手に喜んでもらいたいと考えるようになったんですよね。

自分から『アクション』を起こすこと、相手の言葉や行動に『リアクション』を示せること。それは恋愛にかぎらず、島のなかで新しいことやるときには大事なことなんです」(小島さん)

1年目からずっと島コン運営を進めてきた小島さんはそう話す。

島の男たちが、島で変わるきっかけをつくる島コン。そして、島外の女性にとっては、島の暮らしを知り、その変わりゆく男性と出会えるきっかけをもつくる。

長い目でみれば、そういった変化や出会いが、地域を少しずつ変えていくのだ。

ようこそ三宅島へ

約20年周期で火山が「また噴火するかもしれない」と言われるなか、それでも大人も子どもも活き活きと暮らせる地域にしようとする3playの活動の根底には、ただただ地元愛しかない。

「活発な同世代が増えるのはうれしいですよね」と穴原さんが口にするように、三宅島に新たな若者が増えていくことを願いたい。

三宅島に行こう、彼らに会いに行ってみよう。

写真:根岸里紗

大見謝将伍
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大見謝将伍

大見謝将伍1988年生まれ。沖縄-伊平屋島出身。バーテンダー、外資IT ベンチャーを経て、2013年よりフリーランス(企画・編集・執筆)として活動をはじめる。「つたえる、つなぐ、まぜる」をコンセプトに、地域に根付いた「はたらき方/くらし方」の研究プロジェクト「coqktail/カクテル 」主宰。「おきなわ移住計画」代表、商店街ウェブマガジン「焦点街」編集長など。 [WEB] http://nurariworks.com/ https://note.mu/omija

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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