“上総のまち”いちはら
▲市原市中心を流れる「養老川」
北に東京湾に面する臨海工業地域、南には房総丘陵に連なる山間部を有する千葉県市原市。明治時代の大規模な町村合併を経て、1963年に五井、市原、姉崎、市津、三和の5町が合併。さらに1967年に南総町、加茂村が加わり、県内最大の面積を誇る一郡一市のまちが誕生しました。房総の地は、古くから良質の麻が多く産出された“総の国”。大化の改新の後、市原に上総国府が置かれたことから、まちは文化や行政の中心地として栄え、中心を流れる養老川は、物資輸送の幹線として利用されていました。
1957年から始まった臨海部の埋め立てに伴い、北部には石油化学工業を中心とするコンビナートが集まり、都心や首都圏で働く人々のベッドタウンとしても発展。現在も工業製造品の出荷額は県内最大を誇り、愛知県に次ぐ工業都市として知られています。毎年恒例の「上総いちはら国府祭り」では、時代絵巻行列や、山鉾と山車の巡行、郷土芸能の披露、大綱引きなど、市民参加のさまざまなイベントを開催。歴史に想いを馳せつつ、まちの繁栄と住民の幸せを願うお祭りとして親しまれています。
アクセス抜群の自然の宝庫
市原市は南北に36kmと長く、南部の深い山から北部の台地、東京湾沿岸まで、標高差があることも特徴です。市の中央に養老川、北東部に村田川、北西部には椎津川が流れ、それぞれの台地に育まれる変化に富んだ環境は、清らかな湧水と多様な動植物の宝庫。特に、南部には、日本の原風景ともいえる豊かな自然が残されており、圏央道「市原鶴舞IC」の開設により、車でのアクセスも抜群に。日本有数の紅葉の名所で、温泉郷としても知られる「養老渓谷」は、年間を通じて多くの観光客で賑わいます。
▲「大福山」から臨む、秋の絶景
房総を代表する名瀑、「粟又の滝」と「小沢又の滝」の幻想的な景観を味わえる「滝めぐりコース」、市原市の最高峰、「大福山」から絶景を臨む「大福山・梅ヶ瀬コース」などのハイキングコースが整備されており、歩いたあとは、渓谷の野趣あふれる露天風呂で疲れを癒す、贅沢なひとときを堪能できます。
トロッコ列車が走るローカル線「小湊鉄道」
桜のトンネルを抜け、広大な菜の花の絨毯を走るツートンカラーのレトロな列車。市原の春の風物詩ともいわれる光景を彩るのは、1915年に開業した「小湊鉄道」。東京湾の五井駅から夷隅郡大多喜町の上総中野駅までを結ぶ全長39.1kmのローカル線です。
▲菜の花畑を走り抜ける「小湊鉄道」
運航している列車はディーゼル車で、18の駅の半分は無人。2015年からは、大正時代から昭和にかけて同鉄道で活躍したドイツ製蒸気機関車を復元し、トロッコ列車の運行を開始。古き良き時代を偲ばせるノスタルジックな雰囲気と相まって、多くの利用客に愛されています。鉄道の建造物22軒は、国登録有形文化財への指定が決まり、養老渓谷駅の周辺を緑あふれる空間に改装する新たな事業にも着手。駅前を開発するのではなく、森や林に囲まれた本来の姿に戻すというユニークな試みに注目が集まっています。
アートで地域に新風を
▲「市原湖畔美術館」の広場にあるオブジェ。美術館は、アートを利用した地域活性化の中心施設になっている
2014年には、“晴れたら市原、行こう!”をキャッチフレーズに、南市原の里山を舞台に現代アートの祭典、「いちはらアート×ミックス」がスタート。芸術の力で地域の魅力を発掘し、人口減少や少子高齢化の問題を抱える南部地域の活性化を目指す取り組みです。
第1回目の芸術祭では、新潟県十日町市「大地の芸術祭」や瀬戸内海の島々を舞台にする「瀬戸内国際芸術祭」など数多くのプロジェクトを成功させた名プロデューサー、北川フラム氏を総合ディレクターに起用。ロゴには、「小湊鉄道」の鮮やかな色と形を採用し、列車はもちろん、廃校になった小学校を活用した展示やワークショップなどを開催しました。
▲「市原湖畔美術館」の展示作品「ハイ・ホー」
第2回目を迎える今年は、4月8日(土)から5月14日(日)までの37日間にわたって開催される予定。市・県内外のアーティストや地元の地域おこし協力隊、ボランティアたちが力を合わせて、最高の舞台を準備しています。花々が新緑の里山を彩る美しい季節に、多彩なアートを体感できる絶好の機会です。
自然・歴史・文化など、地域ならではの特性を活かし、新たな人の循環を生み出すプロジェクトが目白押しの市原市。活力あふれるまちづくりに期待が高まります。