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2023年10月20日 ココロココ編集部

移住してから見えてきた、仕事とプライベートで本当に必要だった事(名寄市 後編)

2021年に名寄市に移住し、グラフィックデザイナーとして幅広い分野の仕事をリモートで対応しているフリーランスデザイナーの満吉昇平さん。鹿児島出身の満吉さんにとって、名寄の‟雪がある暮らし”はとても新鮮な体験でした。移住のきっかけともなり、冬が一番好きな季節だといいます。

満吉さんは、移住するまでは夫婦でマレーシアに暮らしていたそう。なぜ、名寄市に移住を決めたのでしょうか。そして気になるのは、この最北の地で、クリエイティブな仕事は本当に成り立つのか、成り立たせるためにどんな工夫が必要なのか。

今回は名寄市民文化センター「エンレイホール」でインタビューを行い、仕事に関するアレコレ、北国ならではの暮らしの楽しみ、苦労話など、移住に関する気になるポイントを伺いました。

記事前編はこちらから

「本当にやりたいこと」がクリアに見えるようになった

名寄に定住し始めてからも、今までと変わらない仕事のスタイルを維持している満吉さん。コロナがもたらした「リモートワーク」の定着は、移住をより気軽な選択肢にしてくれたともいえます。

「僕の職種によるところも大きいですが、都心に暮らす必要性だったり、場所が要因となっている問題は全然ないですね。地元九州に帰る時には、東京や大阪にも寄っていますが、それもいいリフレッシュになるから寄っている感覚ですね。僕にとっては、普段は人が少ない場所で仕事をして、時々人が多いところに行くくらいが心地いいんです。」

刺激に溢れる都会は暮らすのではなく、リフレッシュが出来る場所として付き合ってみるのもいい

好奇心が強く、飽きっぽい性格だという満吉さんにとって、興味関心の対象が多すぎる都会は刺激が強く、せわしない環境から「本当に大事なものを見失うことが多かった」といいます。自分の気持ちの変化について、満吉さんはこのように話していました。

「都会にいた時には、あっちこっちと行ったり来たりして、結局何をしたいのか、誰と付き合っていいのかも、分からなくなっちゃったんです。それが名寄に来てみて、すごくクリアになりましたね。たとえば東京に行った時に連絡する人とか、必ずやるべき事とか、寄るべき店とか。色々なことがクリアになって、やりたいことも絞れてきたので、仕事もフォーカスできるようになりました。これは大きなメリットだと思っています。もちろん東京も好きですけれどね、かっこいいし。」

名寄に来て、やるべき事・やりたい事がクリアになったという

選択と集中で仕事の付加価値を上げることができた満吉さん。とはいえ、これまで培った人脈や、自身のブランド価値を途切れさせないために、ある程度の努力は必要とも言います。

「名寄に来て、自分から発信する機会は増えましたね。昔はまったくしてなかったのですが、もうちょっと‟自分”を出していったほうがいいなと思いました。直接会えない分、忘れられないように、声はかけ続けています。仕事の話じゃなくても、『元気ですか』とか。むしろ、都会にいる時よりも連絡を取るようになったかもしれないです。距離は離れていますけれど、人間関係は近づいているのかなと。」

今の満足度はその表情からも垣間見られますが、都会よりもストレスフリーに仕事をできているのか、聞いてみました。

「それはもう、だいぶストレスなくできるようになりましたね。僕のプライオリティは、『仕事よりもプライベート』なので、どちらかと言えば『遊びのために働く』というところにウエイトを置いています。日々を充実させるために、美味しいものを食べたい、いい景色を見たい、旅行に行きたい、趣味や遊びにお金を費やしたい、そのために僕は仕事をしています。多分、『仕事のために移住します』という人には難しいことも多いと思いますが、僕にはすごく合っているなと感じて、だからこそ名寄好きだと感じられますね。」

何もないからこそ、おのずと「クリエイト」が生まれる

賃貸の一軒家を改装して快適な住居を手に入れ、これまでと変わらない仕事で、生活のコストが下がったことで都会では得られないモノを手に入れたという満吉さん。オフの日の楽しみは、ひと手間をかけることなのだそう。

「雪が降っている中、部屋の窓のブラインドを上げて、降っている雪を見ながら、家の中であったかいものを飲む。ちょっとした日常のひと時がいいんですよね。名寄に来て、余計にひと手間かけちゃうことが多くなりました。ちょっとかっこつけて、テーブルにクロスをかけてご飯を食べたり、ちょっと手の込んだ料理を作ったり。友達を呼ぶ時にも、ちょっといいワインを買ったり、しなくてもいいのにパーティーをしたり(笑)。名寄には何もないから、自分が作らないと出てこないんですよね。」

名寄に暮らしてから、日常のひと時もより魅力的に感じられるという

インプットを積み重ねた自らの感性で、ゼロからクリエイトするクリエイター。そのスキルが生かされ磨かれるのは、むしろ名寄のような場所なのかもしれません。

「都会だと例えば、全部やってくれるレストランなんかがあるわけです。でも名寄だと、自分でやらないと無いですから。東京とかにいた時よりも、『こうしたらもっといいんじゃないか』って生活ができるようになったと思います。」

雪がしんしんと降り、胸がきゅっとなる冬

愛車をガシガシと乗りこなし、地元九州まで向かうこともあるという

日常の足として四駆のプロボックスを乗りこなし、お気に入りのカメラ「リコーGR」でスナップするのが趣味という満吉さん。「休日の過ごし方」と「名寄で好きなスポット」を聞いてみると、ちょっと意外な答えが返ってきました。

「僕、家が好きなんですよね。出窓がある食卓のテーブルにいる時がいちばん好きです。あとは庭とか。季節は冬が好きですね。『雪がしんしんと降る』って言いますけど、本当にしんしんと降るんですね。胸がきゅっとなるんですよ、僕なんかでも。」

しんしんと降り積もる雪が描く、真っ白な景色

「雪の日なんか、外に出ても本当に人が誰もいないんです。びっくりするくらい。でもちょっと居酒屋のドアを開けた瞬間、大盛り上がりしていたりして、そこが面白いですよね。高倉健の映画に出てくるような街のイメージです。冬は寒いですけれど、なんか、あったかい街ですよね。」

名寄は、だれでも試合に出られる場所

いろいろなことに挑戦できる。出る杭も打たれない。いきなり第一線で戦力として活躍できる。これがクリエイターにとって、大きなメリットになるとも話してくれた満吉さん。

「『試合に出られないチーム』にいるよりも、『試合に出られるチーム』に行ったほうが伸びると思うんです。自分の好きなことを突き詰めて、アウトプットして経験を積み重ねていったほうが、やりたいことを形にしやすいんじゃないかなと思います。都会だと、なかなか芽が出ないとか個性をつぶされちゃうとかも多いと思いますが、名寄は『だれでも試合に出られる場所』だと思いますね。」

自身の経験談をもとに、終始柔らかな口調で語っていただいた

最後に、どんな人が名寄で暮らすのに向いていると思うか、聞いてみました。

「いつもアンテナを張っていないと、難しいかもしれないですね。やっぱり都会に比べるとインプットできる場所や事は少ないので。『自分はこうだ』と確たるスタイルがある人は強いと思いますが、僕はまだ発展途上なので、アンテナを張って、いろいろなものを吸収して、ちょっとずつアウトプットしていっています。逆にそれが苦にならない人で、PCで仕事ができる職種なら、きっと問題ないと思います。」

「発信が得意な方、第一声を挙げたい方にも向いているんじゃないかなと思います。『イベントやりましょう』とか『この企画についてきてくれる人いませんか』とか。そういう人にとって、名寄は何でも実現しやすい場所だと思います。失敗も成功も含め、いろいろ挑戦して、いろいろ学べるところだと思うので、そういうのが好きな方に来てもらったら面白いですね。」

名寄市に暮らすクリエイター達が生み出す、新しい価値や新しい暮らし方。さまざまなクリエイターが混ざり合って、これからの名寄を形作ってくれるだろう。

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取材先

キツネトシカデザイン 満吉昇平さん

鹿児島県出身。マレーシアなどの海外で生活したのち、コロナがきっかけで2021年に奥様の実家がある名寄市に移住。グラフィックデザイナーとして幅広い分野の仕事をリモートで請け負っている、フリーランスデザイナー。

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ココロココ編集部

ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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