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2015年4月15日 山田智子

ここが都内!? 近くて遠い利島(としま)の魅力

日本にはどれくらいの島があるか知っていますか?

答えは、6,852島。北海道、本州、四国、九州、沖縄本島の5つの「本土」と、6,847つの「離島」、日本はすべて島からなる国です。 意外にも、東京都には330の島があり、全国で第6位の多さ。そのうち、民間の人が暮らす島は11個、約27,000人の“都民の島人”が暮らしています。

今回ココロココが訪れたのは、伊豆諸島で一番面積が小さい、人口300人の利島(としま)です。20、30代の約80%が移住者というこの小さな島は、なぜ人を魅了するのでしょうか?

4人の島民にインタビューする中で、その手がかりとなる利島のさまざまな表情が見えてきました。

 

利島はココです!

東京都心から南へ直線距離で134㎞、伊豆諸島の北から2番目に位置する利島。

利島位置

竹芝桟橋からジェット船で約2時間半、海上から移り行く東京湾や富士山の景色を眺めている間に着いてしまうアクセスの良さも魅力です。しかし冬になると西風の影響で、船の着岸率が50%以下に下がり、1週間近く島に船が着かないことも珍しくありません。利島は近いのに遠くて、だからこそ、独特な魅力にあふれる島なのです。

利島の魅力その1:生産量日本一の椿島

利島の代名詞、椿。島の80%が椿に覆われており、その数なんと20万本。冬には赤い花が島全体を彩ります。

椿

利島で椿油の生産が始められた年は定かではありませんが、1760年頃椿油で年貢を納めたという最初の記録が残っています。以来200年以上にわたり代々受け継がれ、その生産量は日本一を誇ります。

村長の前田福夫さんが「クレーンもない江戸時代に、傾斜のある土地に椿を植えて、育つまで保護し、現在の段々畑のような椿林を作った。その努力と忍耐、そして継続性、それは凄まじいものだったと思います。その(先人たちの)おかげで、何百年にわたって島の人は恩恵を受けている。そのことを忘れてはいけない」と話す“利島の宝”です。(→村長 前田福夫さんインタビュー)

シャンプーに使われるなど美容効果が高いことで知られる椿油ですが、近年は食用としても注目されています。これまでも高級料亭などで天ぷら油などに使われていましたが、椿油に多く含まれる「オレイン酸」が悪玉コレステロールを減らす効果があるため、ニーズが高まっています。

椿油

「椿油には、オレイン酸が85%以上含まれています。オリーブオイルが70~80%くらいなので、それより多いですね。化粧品だけでなく、食用という別の価値で評価されてきています。」(→利島村椿油製油センター 清水恵介さんインタビュー)

利島の魅力その2:豊かな海の恵み イルカでも注目

椿とならび、利島を代表する産業の一つが漁業です。利島周辺は非常に潮の流れが速いため、魚介類は身がしまり、食感も味も抜群。築地市場などでも好評です。

海鮮

サイズが大きいことも利島の海産物の特徴。特産品の伊勢エビとサザエなど「一般に市場に出回っているサイズは、利島では海に返します※1」と漁師の梅田孝規さんが教えてくれました。乱獲をせず、大切な海の恵みを守りながら漁業を行うため、利島の海産物は自然に大きく育つのです。

※1 利島村漁協では、サザエは350g以下、伊勢海老は200g以下(潜り漁は350g以下)のサイズは放流するルールになっている(平成27年3月現在)

ドルフィンスイム

また、数年前に野生のイルカが御蔵島から利島に“移住”し、イルカと一緒に泳ぐことが出来るドルフィンスイムも利島の海の新しい魅力となっています。

利島の魅力その3:一つの家族のように助け合い、暮らす

強い西風が吹く冬には、高速ジェット船だけでなく、大型客船までもが着岸できない日が多い利島。竹芝を出て大島を経由して利島に向かった船が、桟橋に近づいて着岸を試みるものの、荒れた波に桟橋が隠れてしまい、諦めてそのまま次の新島に行ってしまう、ということも珍しくありません。利島で降りられず、新島に行ってしまうことを、利島の人たちは「流される」と言うそうです。

ヘリコプター

大型客船が着かないと、島への物流も途絶えます。物流は離島に共通する課題ですが、特に冬の利島は船による物流や移動が不安定。1日1便、大島からのヘリコプターが頼りとなります。船が数日着かなかった時は、大島から誰か帰ってくると聞ききつけ、卵を買ってきてもらうように頼んだこともあるそうです。

厳しい自然環境の中で、コミュニティの一体感は重要です。村総出で協同作業を行う「結」や、生まれた子どもの子守り役を決める「ボイ」制度など、独自な風習が現在まで受け継がれていることも、島全体が家族のように仲良く暮らす秘訣かもしれません。

利島の魅力その4:30代の約85%が移住者!

人と人とのつながりが強い利島ですが、実は30代の約85%が移住者です。(平成27年3月現在)

利島人口ピラミッド

5年ほど前から、移住者を中心に椿油の販路拡大の活動や利島のPR活動など様々なことをに取り組んできましたが、そこにUターンで戻ってきた若者が加わり、活動は勢いを増しています。島出身者と移住者、若者から年配の方、様々な職種の人が集まって活動を行っているのも利島の強みと言えます。

昨年夏には、100人の大学生が利島を訪れ、椿農家の作業を手伝うボランティアプロジェクトが行われました。

ボランティアプロジェクト

人口300人の島で、100人の学生ボランティアを受け入れるというのは、なかなか大変なことです。利島の若い世代が中心となって、農家に協力を呼びかけ、学生を受け入れるための準備・運営を行いました。最初はあまり乗り気でなかった農家の人たちも、一生懸命作業をする若者の姿に感動し、最後は涙を流して感謝される方もいたそうです。一方、こうした活動をきっかけに利島に興味をもち、島を訪れる若者も増えてきています。

外からの風は、利島に良い循環をもたらしています。

山田智子
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私が紹介しました

山田智子

山田智子岐阜県出身。カメラマン兼編集・ライター。 岐阜→大阪→愛知→東京→岐阜。好きなまちは、岐阜と、以前住んでいた蔵前。 制作会社、スポーツ競技団体を経て、現在は「スポーツでまちを元気にする」ことをライフワークに地元岐阜で活動しています。岐阜のスポーツを紹介するWEBマガジン「STAR+(スタート)」も主催。 インタビューを通して、「スポーツ」「まちづくり」「ものづくり」の分野で挑戦する人たちの想いを、丁寧に伝えていきたいと思っています。

人と風土の
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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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