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2015年9月30日 ココロココ編集部

美しい街並みの中で、人と人をつなぐ「マチナカプロジェクト」

栃木県栃木市の歴史的建物や空き家、地元産業の担い手を育むプロジェクト「マチナカプロジェクト」。「マチ」と「イナカ」をつなぐという意味で、「mach – i- naka」と名付けられた。

メンバーは、代表の大波龍郷さんと、不動産担当の中村純さん、リノベーション担当の後藤洋平さんの3人。皆、栃木高校時代の友人で、大学進学を機に他都県に移り住んだが、栃木で働きたいと戻ってきた。この3人をまた引き寄せた、栃木市の魅力を代表の大波さんに伺った。

人の心を動かす美しい街並み

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江戸時代に日光例幣使街道の宿場町として栄えた現在の栃木県栃木市。1871(明治4)年に行われた廃藩置県後の一時期には、旧栃木県と宇都宮県とが合併した後の栃木県の県庁所在地であったことから、現在でも中心市街地南部の倭町界隈には、国登録文化財の「旧栃木県官舎」や「関根家住宅」など立派な建物が立ち並んでいる。



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マチナカプロジェクト代表の大波さんは、栃木市に隣接する小山市生まれ。

「小山市から栃木市の高校に通学していて、通学路で蔵が残る歴史ある街並みを毎日のように見ていたんですけど、転勤族で小さい頃は各地を転々としていたので、地域に根ざした暮らしぶりや、100年以上続いている街並みがかっこいいと思ったんです。」

栃木市の街並みに魅力を感じたことがきっかけに「歴史ある建物を残したい」と考え建築学科に進学。学生時代は、全国の歴史ある街並みが残る街を訪ね歩き、フィールドワークを行った。

 

栃木に戻らないと始まらない

大学卒業後は、栃木県内の建築関係の企業で2年働いた大波さん。

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「大学を卒業してすぐに栃木市と関わるきっかけを探していました。当時の一番の理想としては、地元の古民家とかの再生をやっている建築設計事務所に就職することだったんですけど、県外にいて情報が少なかったのでとりあえず栃木に戻ってきたという感じです。」

退職後、アルバイト生活をしながら、栃木市と関わるきっかけを模索していた。

「栃木市は通学していただけなので頼れる人も居なくて。そんな時に、現在の勤め先であるとちぎ市民活動推進センター『くらら』に顔を出したりして、街並みや文化を守る活動をしている方を紹介してもらいました。」

転機は2011年。「とちぎ蔵の街美術館」からNPO団体を通じて大波さんに、企画展に際して地域と連携してイベントで盛り上げて欲しいという依頼があった。



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「栃木市のメインである蔵の街大通りに空き店舗や空き家がいくつもあったので、それを活用しようという話になりました。家主さんに話を伺うと、常時貸すのは難しいけど、イベントとかで使用するのだったら喜んで貸すと仰ってくれて。僕たちも使わせてもらうお礼に、建物を綺麗に掃除したり、場所代を支払って、建物の維持に協力しようと。そんなことを少しずつしていきました。」

ちょうどその頃、中村さんと後藤さんも地元で働きたいとUターンしてきて再会。皆建築関係の仕事に携わっていたことから、マチナカプロジェクトが発足した。

 

楽しんで活用する、未来の街並みの担い手を育てる

マチナカプロジェクトでは、2012年に行った県指定の文化財である「旧古久磯提灯店」の再生活用プロジェクトを皮切りに、これまで10軒の建物を活用してきた。再生した建物は、栃木市で年に1回開催されている「蔵の街かど映画祭」の上映会場として使用したり、マルシェが開かれたりしている。

大通りの顔である国登録文化財の「旧堺屋本店」が空き店舗となった時には、大工やコミュニティを紹介して、道具屋「MOROcraft」のオープンを手伝った。

「MOROcraftに、栃木に移住してきた若い人や、東京と栃木の二拠点で働くクリエイターが集まってきていて、場所を求める声や、新しいイベント企画が立ち上がるようになったんです。僕らは空きスペースをイベントの時に善意で使わせてもらうところから始まったんですけど、今後は場所を求めている人のつなぎ役になれたらいいなと考え始めました。」



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2015年に半年の改修期間を経てオープンした「ぽたり」は、後藤さんが設計して「アイヅヤ陶珈紗」2階をリノベーションしたシェアスペース。子どもから大人まで携わって改修した空間には、多目的に使うことができるスペースがある。

「余った空間を市民に貸し出すことで、街に出かけるのも、買い物だけでなく、イベントや打ち合わせで集まるから出掛けるっていう、新しい動線が生まれることを期待しています。」



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2014年には栃木市内の高校に通う高校生によるまちづくりサークル「とちぎ高校生蔵部」が発足。イベントを企画するなどして蔵の街とちぎのまちづくりや地元の人との交流をしている。大波さんが栃木市の街並みに心惹かれたように、蔵の街を楽しんでくれる高校生が増えてきた。

夢を叶え、2012年から国登録有形文化財の「旧栃木県官舎」を借りて、栃木暮らしを楽しんでいる大波さん。

「建築を勉強していた頃は、歴史ある建物をどう残していくかってことが中心だったんですけど、今では高校生をはじめ若い人たちにこの街を楽しんでもらいたいと思っています。建物を保存することが目的ではなく、建物がもつ空間や物語を若い人たちが楽しみながら活用できることに価値があるんじゃないでしょうか。」

古くから残る栃木市の魅力を、人と人との新たなつながりが生かしている。

 

栃木と気軽に関われる道しるべ「はじまりのローカル コンパス」では、マチナカプロジェクトと連携し、全4回のプログラムを行います。
※「はじまりのローカル コンパス」の詳細はコチラ→http://www.hajimari-local.jp/tour-long2015/

最後に「はじまりのローカル コンパス」参加希望者へのメッセージを伺いました!

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「今回のプロジェクトを通して地域に根ざして働いている人と関わって欲しいです。 最近栃木に移住した若者と交流する場も設けているので、多くの人と出会ってもらいたいです。僕らのプロジェクトを一緒に作り上げていってもらいたいので、アイディアだけでなく実行まで移せる人にぜひ関わってもらいですし、自分が今後関わりたい分野を見つけてもらえればと思っています。栃木を楽しくしてくれるようなプレイヤーやサポーターとなってくれるような人との出会いを期待しています。」

「はじまりのローカル コンパス」は、10月4日(日)に東京都内で行われるイベントを皮切りに、2016年2月にかけて様々なプロジェクトや企画が栃木県内各地で行われる。



TALK EVENT「あなたのローカル見つけませんか?」

■日 時:2015年10月4日(日)
15:30~18:00(開場15:10~)
交流会 18:00~19:00
■場 所:SHIBAURA HOUSE 5F(東京都港区芝浦3-15-4 JR田町駅 芝浦口徒歩7分)
→google map
■概 要:地域活性化をテーマに全国の地域プロジェクトを発信している「マチノコト」の江口晋太郎さんと栃木でソーシャルな取り組みを行う団体のリーダーたちをゲストに迎え、地域の姿とそこで活動する人の魅力を伝え、地域での面白さややりがい、地方暮らしを楽しむトークイベントです。
■内 容:
・ゲスト講演「ローカルからはじまる、これからのコト」江口晋太郎 氏
・受入れ地域紹介
・トークセッション「これからの地方の可能性と面白さ」
・プロジェクト交流セッション
・交流会
■参加費:無料(交流会参加希望者は別途1,000円)

★WEB&Facebook
詳細はサイトから→http://www.hajimari-local.jp/
FBもチェック!→https://www.facebook.com/hajimarilocal



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ココロココ編集部ココロココでは、「地方と都市をつなぐ・つたえる」をコンセプトに、移住や交流のきっかけとなるコミュニティや体験、実際に移住して活躍されている方などをご紹介しています! 移住・交流を考える「ローカルシフト」イベントも定期的に開催。 目指すのは、「モノとおカネの交換」ではなく、「ココロとココロの交換」により、豊かな関係性を増やしていくこと。 東京の編集部ではありますが、常に「ローカル」を考えています。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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