森林に囲まれた谷合いが育んだ有機の里
SLが走る鉄道として知られる真岡鐵道の終着駅「茂木」駅がある栃木県芳賀郡茂木町。棚田やゆず、梅などの「オーナー制度」の創設や生ゴミの堆肥化など、先進的な取り組みを早くから町を挙げて行ってきた。
野原さんは、新規就農者支援活動をしたいと2009年に脱サラ。農業に関心を持ち始めたきっかけは、遺伝子組み換えについて調べていくうちに日本の農業に危機感を覚えたことだ。
東日本大震災の年までの2年半、自然農をしている福島県岩瀬郡天栄村の農家と知り合い自然農を学びながら、耕作放棄された農地を借りて新規就農者の受け入れをし、そこで育てた作物を消費者ネットワークを使って循環させようと準備をしていた。
「農業に関しては素人だったので、まずはネットワークを作ろうと、横浜から天栄村まで2年半通って、農家の手伝いをしていました。日本の農業を大きな資本から守るためには、小さな山間部しなかいと。山間部で新規就農する若者って、環境保全型農業を目指す者が多く、そういう農家をサポートしていきたいと思いました。」
福島で研修生を受け入れてくれる自然栽培の農家を探したが、受け入れ先が見つかるどころか、自然栽培自体をやっている農家が2軒くらいしかなかったという。
「生まれたのが『福島自然栽培の会』です。無肥料栽培を広めていこうということで、消費者にどういうプロセスを経て作られている野菜かなどを伝えるセミナーを開いたりして軌道に乗りかけていた矢先に、震災が起きたんです。」
現在、田舎でも確立できる「オーガニック八百屋」としての顔も持つ野原さん。
「震災後に、子どもを持つ親から九州の自然栽培で育った野菜が欲しいと言われ、これまでのネットワークを生かして仕入れたことがきかっけです。求めている人がいるんだったらつなげようということで。」
その後、茂木町でブルーベリーの自然栽培をしている農家から、空いている古民家と畑があると誘いを受けたことがきかっけで茂木町に移住してきた。
つながりから生まれ、つながりを生むオーガニックマルシェ
環境保全型農業が盛んな地域だと知らずに移住してきた野原さん。環境保全型農業をされている農家が栃木県内で一番多いということを地元の人も知っている人が少ないという。
「これでは茂木の農家さんが浮かばれないとオーガニックマルシェをやりたいねと話があがったんです。農家と八百屋だけでは成り立たないから、と探してみたところ、いろいろな作家さんや、公務員をやりつつ耕作放棄地を耕している中村さんに出会って、こういう人たちをつなげていったら何かおもしろいことができないかなと思って。」
野原さんと中村さんは、半年に1回開かれている茂木オーガニック交流広場「森と里のつながるマルシェ」の実行委員会のメンバーでもあり、行政の力を借りずに運営を行っている。会場は、1192(建久2)年に鎮座したと歴史が残り、地元で「やくもさん」として親しまれている八雲神社。
「オーガニックマルシェをやろうと会場探しをしていた時に、最初はキャンプ場とか森に囲まれた自然のあるところでやろうかなと思っていたんですけど、やはり最初は茂木の神様にご挨拶してはどうかということになり、八雲神社さんにお願いしました。」
野原さんの提案に、八雲神社の宮司・小堀真洋さんは躊躇いなく快諾したという。
「野原さんのご様子から信頼できたのと、もともと神社というのは人が集まる場所ですから。」
今では小堀さんが「森と里のつながるマルシェ」の実行委員になるほどマルシェを楽しんでいる。
地域の人を巻き込んで成長してきた「森と里のつながるマルシェ」は、2015年11月22日(日)に4回目が開催される。毎回好評のワークショップは、茂木町の在来作物を使った、酵素ジュース作りやコンニャク作りを予定している。
2015年10月から栃木県内各地を舞台にスタートした「はじまりのローカル コンパス」では、このマルシェのサポートも体験することができる。
※「はじまりのローカル コンパス」の詳細はコチラ→http://www.hajimari-local.jp/tour-long2015/
耕作放棄の棚田の再生でシェアする農業
森林に囲まれた谷合いが多い茂木町は、湧水に恵まれ生態系豊かで棚田が多く、日本の棚田百選に選ばれている地区もある。しかし、耕作放棄されている棚田が多いのが現状だ。
八雲神社からほど近い場所にあり、耕作放棄された「明神棚田」を中村さんが借りたことがきっかけで、「もてぎ里山らいふプロジェクト」による活動が始まった。田んぼ26枚分、延べ約4,000㎡もあるこの棚田は、数十年前に耕作放棄され、一度は1998(平成10)年頃からハッチョウトンボが自生するなどビオトープになっていたこともあるが、再び耕作放棄地になった。
「最初、地元の農家さんに来ていただいて、ここを元に戻したいと伝えたら、これは無理だろうと。他にも放棄地はあるので、他でやろうかという話もあったんですけど、八雲神社や駅からも近かったので、まずはここでモデルケースを作って広めていこうと始まりました。」 少しずつメンバーが集まり始め、男性や赤ん坊を抱いたままの母親などが人力で耕し、2枚耕すのに1年かかった。
コンパスの第2回目10月24日(土)・25日(日)では、タイミングが合えば明神棚田での収穫体験を予定している。
野原さんは、横浜に住んでいた頃、自宅近くの青葉区あざみ野で畦作りから手探りで田んぼを作り、最初から自然栽培を行った経験を持つ。
「開墾は男性陣がやって、疲れたからもう来ないだろうと思っていたら、手作り感がおもしろいとリピーターになって、2年目には女性陣が開墾し始めたんです。新規就農者を支援しようという気持ちだったのが、シェアする農業をしてプラットホームを作っていった方が早いのかなと思うようになりました。それを、また茂木で行っています。」
野原さんは、当初の耕作放棄地を減らし、新規就農者を支援したいという思いはそのままに、地方で八百屋をするモデルケースや、シェアする農業のプラットホームを作っていきたいという。
人と人とのつながりこそ、オーガニック。点と点が線になり、形となっていく。
栃木と気軽に関われる道しるべ「はじまりのローカル コンパス」では、もてぎ里山らいふプロジェクトと連携し、全4回のプログラムを行います。
※「はじまりのローカル コンパス」の詳細はコチラ→http://www.hajimari-local.jp/tour-long2015/
最後に「はじまりのローカル コンパス」参加希望者へのメッセージを伺いました!
「地方移住の課題は、地方での暮らしと仕事を結びつけることだと思うので、茂木の農家さんなど地元の人との触れ合いを通して、自分なりの方法を見つけに来て欲しいです。」
茂木の豊かな自然と里山で営まれる農業との関わりを通じて、「地域」に関わるヒントがたくさん見つかりそうだ。
「はじまりのローカル コンパス!」ミツカルツアーLong ver.
■日 時:2015年10月10日(土)10:30~14:00
■場 所:いいオフィス(東京都台東区東上野2-18-7 共同ビル3F)
■概 要:はじめての人でも安心!地域に関わるイロハを学びます。栃木を知り、あなたとローカルとの関わり方を考える時間です。栃木で活躍する地域おこし協力隊もゲストとしてお越しいただき、現場の声をお届け。栃木のGood Place「2tree cafe」presents、栃木の食材を活かした、美味しいプチランチも。そして下記のまちなかコース、さとやまコースのいずれかを選びます。
<まちなかコース:栃木市>
\遊休不動産の活用、地元産業の担い手発掘/
訪問先 マチナカプロジェクト
<活動内容>
落ち着いた風情が残るまちで働き暮らす人々を訪ね、地域を知るフィールドワークを行い、地方都市の魅力を体感するとともにそこにある課題・スキマを見つけていきます。また興味のあるテーマ( 小商い、リノベーション、地元産業)に関わり、実行していきます。
第2回目 2015.11.14(土)~11.15(日)
第3回目 2015.12.12(土)~12.13(日)
<さとやまコース:茂木町>
\耕作放棄地再生・里山暮らし体験活動/
訪問先 もてぎ里山らいふプロジェクト
<活動内容>
棚田の再生活動等を通じて、里山のありのままを五感で感じ、そこで暮らす人々の知恵や価値観に触れ、未来の里山を語りあい、可能性を発見します。また森と農と人をつなげる「森と里のつながるマルシェ」の運営サポートなど、ここでしか出来ない体験を通して、里山らいふを満喫します。
第2回目 2015.10.24(土)~10.25(日)
第3回目 2015.11.22(日)~11.23(月祝)
あなたをまってる「まち」と「ひと」
詳細:http://goo.gl/aGqkuG
■参加申し込み:プログラム参加申込
★WEB&Facebook
詳細はサイトから→http://www.hajimari-local.jp/
FBもチェック!→https://www.facebook.com/hajimarilocal
「はじまりのローカル コンパス」の詳細をチェックする
主催:栃木県
実施団体:NPO法人とちぎユースサポーターズネットワーク