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2020年5月11日 奈良織恵

withコロナ、afterコロナの移住・2拠点居住について思うこと

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こんにちは。ココロココ編集部の奈良です。
今日は2020年5月11日。緊急事態宣言が出されてから約1か月、5月末までに延長されてから最初の週末が終わりました。
新型コロナウィルスは、街の風景や人の暮らし方・働き方を大きく変えてしまいました。コロナ騒動が収束しても、完全に元には戻らないでしょう。

・人と人のリアルな接触・交流を避けなくてはいけない
・都道府県を越えての自由な移動を自粛しなくてはならない

これは、「地方と都市をつなぐ」「人と地域をつなぐ」をテーマに仕事をしていて、自分自身も東京と南房総の2拠点生活をしている私にとって、とても難しくて、考えさせられる問題です。

3月末からずーっとモヤモヤと考えていて、考えたことを文章にまとめたいと思うものの、結局まだよくわからないから結論が出なくて…というのを続けているうちに1か月以上経ってしまいました。ひとまず、結論が出ないなりの現時点でのメモとして書いておきます。

2拠点生活、自分の家なのに帰れない

私は、仕事+プライベートで、5年ほど前から南房総に通い始め、2拠点生活のための家を1年半ほどかけて探し、昨年3月から本格的な2拠点居住をしています。
特別な用事がない限りは、週末はほぼ南房総で過ごしていましたが、今日(5月11日)時点では、3月22日を最後に、南房総の家には行っていません。
3月最後の週末も行く予定にしていましたが、3月25日に小池都知事の緊急記者会見があり、そこで今回のコロナ禍に対する危機意識がぐっとあがりました。

南房総の方は、その時点ではまだ感染者も出ておらず、もう少しのんびりしている印象でした(飲み会にも誘われてたし…)。一人で家に行って過ごすだけなら行ってもよかったかもしれませんが、その週末は、南房総でちょっとしたイベントや飲み会なども予定されていて、私が行けば3密状態になりそうな場面もいくつか想定されました。
悩んだ末に、「今週はやめておこう」と思い、久しぶりに週末を東京で過ごすことに。
それ以降、毎週ごとに「今週はやめておこう(来週か再来週あたりには…)」と思いつつ、翌週になるとさらに状況が悪化していて行けない…というのを繰り返して、今に至ります。

家の中のゴミ、出窓の多肉植物、挿し木していたフェイジョアの木、畑の野菜、庭の草、梅の木、昨年の台風被害でブルーシートのままの屋根…
気になることはたくさんあります。

「STAYHOME」するなら、日の当たらない東京のマンションよりも、南房総の家の方が100倍くらい快適だし、こういうときのための2拠点生活だったはずなのに行けないなんて…というのが、残念でもあります。

2拠点生活の大先輩、馬場未織さんとzoom会議

いつ終わるのか、そもそも果たして終わりが来るのかも分からない中で、一人で悶々と考えていても全く答えは見つからない。
誰かとこのテーマについて話がしたくて、4月23日に、南房総つながり友人で、2拠点生活大先輩でもある馬場未織さんに、取材なのか、単純におしゃべりしたいだけなのか、自分でもよくわからないzoomミーティングをお願いしました。

⇒以前、馬場さんの2拠点生活を取材した記事はこちら

あらためて、zoomの動画を見返したら、馬場さんも私も、手を顔や頭にあてて考えてる風のポーズばかりが続いてました…2人ともずっと悩んで、考えながら話をしてたんですね…

馬場さんは、ちょうど、ご自身が連載している媒体でもこのテーマを取り上げるということで、悩みに悩んで原稿を書き上げたところでした。
⇒wedgeの連載コラムはこちら

馬場さんのお話は、wedgeの記事にまとまっているのでそちらをご覧いただきたいのですが、いろいろとお話させてもらい、近況や考えを共有することで、私自身は少し気持ちが軽くなりました。やはり人と話をするって大事。馬場さん、ありがとうございました!

・家のある2拠点生活者と、外から遊びに来た観光客・サーファー。路上を走る「県外ナンバーの車」という点では同じに見えてしまう。2拠点居住者ステッカー欲しいよね。
・家と家の移動だけであれば、感染リスクは無いはずだけど、それでも、地元の方たちの恐怖感情は気になってしまう。
・現地で人と接しないために、食材や燃料などはすべて東京から持っていく。お店にも行かず人にも会わない。本当は房総のお店を応援したいのに。いつまで続けたら良いものか…?
・日々状況も変わるし、人によって事情も違うし、結局明確な答えはないよね…

…といったことをいろいろと話しました。

私自身は、「行きたいけど、行かない方がいい?」「この用事は不要不急?」というのを一人で悩み続けるのがつらくて、誰かが基準をつくってくれたらいいのに…なんて思ってしまってましたが、実際には、人ぞれぞれ事情も状況も違うし、いつどのように収束するのか、誰にも先が見えない中で、一律にルールを決めるのは難しい話。

国としても、日本は、欧米諸国のようなロックダウンではなく、「外出自粛要請」に留まっています。このやり方が甘いという意見もありますが、今回のような、目に見えないウィルス相手で見通しが立たない戦いの場合、「OKかNGか」をゼロイチで決め、それに従えば良いとして思考停止してしまうのも危険。OKとなった途端に一気に緩み、再び感染拡大を招いてしまう恐れもあります。

それよりも、「自分やまわりの人の命を守る」「感染を拡大させない」という大前提の共通目的を据えたうえで、ゼロとイチの間、グレーゾーンを各々が自分の頭で考えて行動する方が、(性善説ではありますが)日本的で柔軟な対応策なのではないかと思うのです。

「移動自粛」が地方と都市の分断を生んだら悲しい

人口が一極集中した東京圏から、過疎が進む地方に人を動かすこと。
これが、地方創生のひとつの大きな要素だったはずですが、今はそれができません。

「今は来ないでください」
というのが、地方から都市部住民に投げられたメッセージ。
人の移動と接触を最大限減らさないと行けない現状での、必要なメッセージではありますが、一方で、他県ナンバーの車への行き過ぎた嫌悪感やいたずら、嫌がらせなども発生しています。

緊急事態宣言が終わった時点で、
「どんどん来てください」
に、いきなりメッセージが変わるのか?というと、ちょっと難しそうです。
コロナが多少落ち着いたからといって、いきなり3密空間での大宴会ができるかというと躊躇してしまうのと同様に、しばらくの間は、他県ナンバーの車でお店や観光地に行くのが、少し憚られてしまいます。

実際にいきなり大勢が押しかけたら問題ですし、受け入れる地域側も、「来ないで」と「来て」を繰り返すような期間が1~2年くらいは続くのかもしれません。

今は、地方出身者も帰省ができない状況です。
「実家に高齢の両親がいる…」となると、2拠点居住者や観光客などよりも、感染拡大リスクは高いともいえます。「毎年帰省して田植えを手伝っている時期に帰れないから人手不足で…」とか「せっかく生まれた孫の顔を全然見せてあげられない」といった声もよく聞きます。
でも、出身者には、実家があったり親戚や同級生がいたり、すでにその地域に張っている「根っこ」があり、たとえ1年ほど帰れなかったとしても、その「根っこ」が無くなってしまうことはないでしょう。
それに対して、まだ地域に「根っこ」が張れてないヨソ者、通い始めてた人、関係人口になりかかってた人の中には、こういう期間が長引くことで、ちょっと地域と距離が出来てしまう人もいるんじゃないかなという気がします。

行ったり来たりできない中で、つながりを維持すること

東日本大震災のときも、昨年の台風のときも、ボランティアや物資など、人やモノが行ったり来たりすることで、地域と地域がつながり、支え合える状況がつくられました。

が、今回のコロナ禍は、行ったり来たりすることが感染拡大を招いてしまうため、どうしても「県外からは来ないで」「地域のことは地域内で」となり、地域を越えた協力や活動が制限されてしまいます。
今回ほど、都道府県知事の存在感を感じたことはなかったし、県境や車のナンバーの意味を考えたこともありませんでした。

地域としての自治や地域内経済を回すことに目が向くのは、良い面もあるかもしれませんが、せっかく2拠点居住や多拠点居住など、複数の地域と関わりを持つ暮らし方や働き方が注目されてきて、受入地域側にも理解者が増えてきた中で、ここでまた、地域が閉じてしまったり、できかけた関係性が薄れてしまうのは残念です。

私自身は、

・知り合いの生産者さんから野菜や卵、パンなどを取り寄せて、東京でのSTAYHOMEの食生活を豊かにできたり
・オンラインで、平日夜から房総仲間と飲み会やボードゲームができたり
・1か月行けてない家が気になる…とつぶやいたら、家の様子を見てきて写真を送ってくれる友人がいたり、畑の面倒みようかと言ってくれる人がいたり

という、顔が見えるつながりの部分で、気持ち的にはだいぶ救われています。

平日夜に急に誘われても、東京から参加できるオンラインボドゲ。房総地域の獣害対策ゲームをやりました

今後しばらくは、都市と地方をつなぐリアルなイベントやツアーの開催は難しく、こういった、離れていてもつながりや帰属意識、コミュニティを感じられる取り組みが重要になってくるのかなと思ってます。

コロナ収束後の地方と都市との関係

今の新型コロナウィルスの状況が、いつのタイミングで、どのようなかたちで収束するのか、まだ予測ができませんが、ある程度状況が落ち着き、人が自由に移動できるようになったら、これまで東京にこだわっていた人の中にも、地方移住や2拠点居住を志向する人が増えてくるでしょう。

東京一極集中の悪の代名詞である「満員電車」は、ただ不快で気持ちが滅入るというだけでなく、実際に感染症拡大というリアルなリスクを持っているということにみんなが気づいたし、オフィスに通勤しないと仕事ができないと思い込んでいた多くの人が、リモートでも意外とやれるじゃんということに気づきました。
実際にすでにオフィスを解約・縮小する企業も出てきています。

リモートワークがあたりまえになれば、会社員のままでも、地方移住がしやすくなる。「地方移住」と肩肘はらずに、引っ越し感覚で、田舎暮らしを始めることができるようになります。
これまでは、「平日東京、週末地方」のパターンが多かった2拠点居住も、もっといろんな組み合わせやライフスタイルが出てくると思います。

一方で、これまでのような大規模な移住イベントやツアーなどは、しばらくは開催が難しく、「人が地域とつながるきっかけづくり」のやり方も変わってきそうですね。
”新しい生活様式”にあった、新しい地方と都市の関係ができていくのかな。

今回は、このようなパンデミック対応の経験が全国的に乏しく、すべてにおいて準備不足だったため、「とにかく人の移動をなくすこと」が最重要で、結果として地域間移動が完全に制限されるかたちとなりましたが、もっと体制が整えられれば、都市の人が「密」を避けて地方に「疎開」するというのも、地方と都市の、あるべき支え合いのかたちなのではないかなと、個人的には思っています。
複数の拠点を持つこと、地域とのつながりを持つことがリスクヘッジでもあるという考え方も、今よりも広がっていくし、今回のような事態の際の「疎開先」として、地方に拠点を持つことを考える人も増えるでしょう。

私がモヤモヤと悩んでいる間にも、オンラインイベント、オンライン移住相談、オンライン宿泊などなど、どんどん新しいことにチャレンジしてる人がいて、移動できないからこそ、オンラインだからこそ、フラットに世界中の人とつながれる楽しさも認識されてきています。

この先1か月後、2か月後、1年後がどうなっているのか、「地方と都市をつなぐ・つたえる」ココロココは、何をしていったら良いのか、まだまだ分からないことも多く悩ましい毎日ですが、少しずつできることから動いていきたいと思いますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

奈良織恵
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奈良織恵

奈良織恵横浜市出身、東京都港区と千葉県南房総市の2拠点生活。 両親とも東京生まれ東京育ちで、全く田舎のない状態で育ったが、父の岩手移住をきっかけに地方に通う楽しさ・豊かさに目覚める。2013年に「ココロココ」をスタートし、編集長に。 地方で面白い活動をする人を取材しつつ、自分自身も2拠点生活の中で新しいライフスタイルを模索中。

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 「風土」という言葉には、地形などの自然環境と、 文化・風習などの社会環境の両方が含まれます。 人々はその風土に根ざした生活を営み、 それぞれの地域に独自の文化や歴史を刻んでいます。

 過疎が進む中で、すべての風土を守り、 残していくことは不可能であり 時とともに消えていく風土もあるでしょう。 その一方で、外から移住してその土地に根付き、 風土を受け継ぎ、新しくつくっていく動きもあります。

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